第32章 不協和音
和泉先生と向かい合って座り、私の隣にはさりげなく武田先生が腰を下ろす。
黙々と資料を広げていく和泉先生を見ながら、息が詰まりそうな空間を過ごしていると、ドアの外が賑やかになった。
西「あ、ここっス相談室」
この声は西谷先輩?
「案内してくれてありがとう。部活、頑張ってね?」
そしてこの声は!
西「もちろんッス!···おーい!龍!!アイス食うか?!」
田「またかよノヤっさん、朝も食ってなかったか?」
和「まったく···あの2人は騒がしいな」
部活でも元気な2人の声が廊下を賑わせているのを聞いて、和泉先生が眉を寄せる。
そんな姿に武田先生が苦笑を零したところでドアがノックされ、和泉先生がどうぞ?と返事をした。
桜「失礼致します。遅くなりまして申し訳ございません、ご連絡頂きました城戸 紡の、」
武「大丈夫です、遅れてなどいませんから」
深々と頭を下げる桜太にぃに、武田先生がスッと席を立ち迎え入れた。
桜「武田先生?···部の方で何か?」
まさか学年も違う武田先生がいるとは思ってなかった桜太にぃが、先生と私を交互に見た。
武「ご心配なく。僕は城戸さんと、とある約束をしていたので、今回はそれを果たす時が来た···と、僕の意思で同席しているんです。さ、こちらへどうぞ?」
私の隣に桜太にぃが座り、それを見て武田先生が私を挟んだ隣に腰を下ろした。
和「烏野高校、英語科担当の和泉です。本日はお忙しい中、突然のご連絡で申し訳ありません。ところで、担任の方には親御さんを···と」
桜「すみません、うちは両親が海外勤務をしているもので···今日の所は保護者として兄の私が」
和「そうですか、分かりま···え···?城戸、紡···の」
再度挨拶をする桜太にぃを正面から見て和泉先生が目を見開き、私の家庭調査表をパラパラと捲り家族構成のところで指を止めた。
和「まさか城戸、って···城戸 桜太···」
桜「えっ?···あ···和泉って、もしかして」
お互いの存在を確認しながら、和泉先生と桜太にぃがそれぞれ記憶のフタを開けている。
武「あの。和泉先生とお兄さんは、もしかしてお知り合いでしたか?」
お互いを見合ったままの2人にふんわりと問いかけると、和泉先生は瞬きをしてから小さく咳払いをした。
和「まさか、ここでお前に会うとは···」
