第32章 不協和音
~ 桜太side ~
学校からの呼び出しなんだから、スーツの方が無難かな?
クローゼットを覗き、どれにしようか?とハンガーを動かしながら一着のスーツを見て···手を止める。
あの日に着てた···
こんな日に俺の目に止まるとか、随分な巡り合わせだね。
それを手に取り着替えを済ませ、まるでこれから出勤するのか?というスタイルで部屋を出ると、俺が頼んだ通りの作業をする慧太が階下にいた。
「行ってくるよ」
慧「おぅ、頼む。教師と揉めんなよ?」
「お前とは違うって。じゃ、遅れたら困るから行くね」
ガレージから自分の車を走らせ、学校へ向かい車を停めさせて貰って事務室で来校者受付を済ませる。
西「あれ?紡の兄さん??」
背後から声を掛けられ振り返れば···
「西谷君?こんにちは、ちょうど良かった。相談室って所まで案内して貰えると助かるんだけど···」
西「相談室、ッスか?それは朝飯前ですけど···もしかして紡、なんかやったんスか?さっきも校内放送でなんか呼び出されてたし」
···校内放送でも呼び出されて、とか。
紡は何をやったんだ?とため息が出る。
「俺も詳しくは分からないんだよ。家に来た連絡を受けたのは慧太だから。その慧太もよく分かってなかったんだけどね」
西「そうなんですか??まぁ、紡に限って変な事はしてないと思いますけど···呼び出してた先生が、ちょっと面倒なヤツだったんで」
「面倒?」
西「はい。こう、ネチネチ、グチグチと長い説教とか···ま、そんな感じッス」
ネチネチ、グチグチと長い説教···生徒指導的な担当の教師なら、紡が呼び出されるような理由は···ひとつだな。
···あの髪の色、かな。
メイクして学校へ行くわけじゃない。
スカートが短い訳じゃない···少し、短いかな?
消去法で選択していけば、最後に残るのは髪の色だ。
そこを突っ込まれたら一緒に怒られて一緒に謝る覚悟は最初から出来てるけど。
呼び出しの原因がそれだったら、慧太に言ってワントーン落とさせるかな。
西「あ、ここっス相談室」
「案内してくれてありがとう。部活、頑張ってね?」
西「もちろんッス!」
急に足を止める西谷君にお礼を言って別れ、ドアに向き直る。
さて···この扉の向こうは強敵がいる、らしい。