第32章 不協和音
~ 慧太side ~
「ではその時間にはお伺い出来るようにします。いえ、大丈夫です···じゃ、失礼します」
はぁ···と大きくため息を吐いて、受話器を置いた。
あのバカ娘、いったい何をやらかしたんだ?
学校から、しかも担任から保護者呼び出しとかどんな間違った育てられ方して···まぁ、それはねぇな。
親代わりにずっと育たてきたのは間違いなく桜太とオレだ。
そりゃまぁ、甘やかし過ぎたって所は自覚はあるが。
桜太がしっかり教育してっから、道徳外れるような心配もねぇ。
オレは···アレだ、学生の頃に苦い関係があったから、その辺は桜太に任せっきりってワケでもねぇけど。
桜「慧太、電話どこから?さっき鳴ってるの聞こえたけど、慧太が出たんだろ?」
起きがけのシャワーを浴びた桜太が、半裸で髪を濡らしたままリビングへ入って来る。
「桜太、その格好は紡が見たら大騒ぎするぞ?」
桜「大丈夫、いま紡は学校だから。それに慧太は俺の事は言えないだろ?」
···ごもっとも。
桜「で、どこから?」
「あぁ、電話な。紡の学校の担任様」
桜「紡の担任?バレー部の武田先生じゃなくて?」
いや、その武田先生こそ平日にお前になんの用があるんだっての。
「なんだか昼休みの時間に緊急三者面談とやらをやりたいから学校来れるか?って」
桜「緊急三者面談?紡は何やらかしたんだ?ってより、紡に限って呼び出されるような悪さは絶対ないと言い切れる自信はあるけど」
はい、出た兄バカ!
あ···オレもか。
「とりあえず行くって言ったし、これから支度してオレ行ってくるよ。今日休みだし」
学校かぁ···ヒゲ、剃った方がいいか?
桜「いいよ、俺が行ってくる。俺も今日休みだし、慧太は代わりに家の事してて?」
「休みならお前がのんびりしてろや?当直明けの休みだろ?」
桜「いいんだ、忙しくしてる方が。何も考えず忙しなくしてる方が、今日は」
今日、は?
桜太の言葉に引っ掛かりを覚えてカレンダーにチラリとみをむける。
あぁ、今日はあの日か···世間一般的に言う、月命日···ってやつね。
「じゃ、学校は桜太に頼むわ」
桜「階段と廊下の拭き掃除、カーテンの洗濯、それから」
「鬼かお前は!」
笑いながら言って了解を返し、さてやりますかとリビングを出た。