第32章 不協和音
和泉「いずれにせよ、担任に頼んで保護者を呼んで貰ってる事だし移動しようか。その保護者も直に来るようだからね。次の授業を欠席する事も許可は得ている。武田先生も、どうぞ授業へ行ってください?」
保護者を呼んでるって···?!
どっちを?!
武「次の授業、ですか。そうですか···それは和泉先生も残念ですね。僕は次の時間は空きなんですよ。なので、彼女も希望している事だし、保護者の方は部の方でもお世話になってるので同席します」
和「なっ···まぁ、いいでしょう。勝手にして下さい」
武「はい。では、そうさせて頂きます。城戸さんはそれで大丈夫ですか?」
『あ、はい。ぜひお願いします···』
菅原先輩や縁下先輩から少し聞いた話だと、和泉先生は何かと手強いらしいから、一人でもこっちサイドの人間がいてくれる方が私も心強い···と思う。
ただ、不安なのは。
呼ばれた保護者が···どっちなのかってところで。
もし、慧太にぃだったとしたら。
あの派手な見た目と格好で···とか。
ちゃんと和泉先生と話をしてくれるのだろうか、とか。
···ないな、多分。
話を聞くだけ聞いて、それを桜太にぃに伝える···位な感じがする。
でも、もし桜太にぃだったとしたら。
和泉先生とはちゃんと話し合いが出来るのは言うまでもないけど。
勉強に関しては···シビアだからなぁ。
将来のためになるなら行ってきなさい···とか、言われたら。
···その可能性は捨てきれない。
むしろ、ある···かも。
着いてくるとかさえ言うかも?!
いくつかの資料を抱えた和泉先生のあとを着いて歩きながらも、頭の中ではいろんな葛藤が芽生えていた。
武「大丈夫ですよ、城戸さん。僕はあなたが···小児科病棟への行き方が分からず迷っていた人と普通に話が出来るところに一緒にいたんですから、ね?」
『はい···』
あの病院での出来事を思い出しながら、武田先生が大丈夫、大丈夫···と何度も小さく言ってくれる。
その言葉を、今は信じようと···相談室のドアをくぐり抜けた。