第32章 不協和音
桜太にぃから今朝預かった物を持って階段を進む。
ガサガサと袋に入った物は、あの楽しい整形外科の立花先生から試供品として渡されたいろんなサイズのテーピング。
発売されたばっかりのやつだけど、良かったら使って見て?とにこやかに渡されたらしいけど。
それにしても立花先生、量が···多すぎやしませんか?
運動部となれば、確かにテーピングなんてあっという間に減ってしまうから、頂けるならありがたいことには変わりないんだけど。
朝練があれば直接部室や体育館に置けたけど、今日は朝練ない日だったから仕方ないか···
階段をズンズンと進み踊り場へ足をかけた時、澤村先輩の声が聞こえた気がして顔を覗かせる。
あ、やっぱり。
あの後ろ姿は絶対そうだ。
『あ、いたいた···大地さん!』
早々と澤村先輩を見つけた事に、つい、周りも確認せずに声を掛けてしまった。
道「大地さん?···って、澤村、だよね?」
あ···あの人は確か女子バレー部の···部長さん同士で打ち合わせとかしてたのかな···?
『あ、すみません。お話中でしたか···』
私の声に振り返る澤村先輩にちょっと申し訳なく言えば、そこに私がいることに澤村先輩が驚いた顔を見せた。
澤「あ、いや、うん···大丈夫。それより俺に用事なんだろ?なんの用事だった?」
なんか、ちょっと慌ててる感じがするのは私の気のせい?
『あの、お取り込み中だったら出直しますから。急ぎの用事とかじゃないし』
澤「だ、大丈夫。ホントに平気だからさ。で、用事は?」
おかしな様子を見せる澤村先輩に躊躇しながらも、手に持っていた袋を掲げて見せた。
『桜太にぃから、預かり物をしたんです。同じ病院の整形外科の先生が良かったらどうぞ?って貰ったからって』
袋ごと手渡すと澤村先輩は中身を見て、こんなにたくさん?と笑った。
『それで賄いきれなくなったら遠慮なく受診してね···と、伝言付きですけど』
桜太にぃを通した立花先生の伝言もちゃんと伝えると、そうならないように気を引き締めないとな?と笑って返された。
『えと···じゃあ、私の任務は終わったので···失礼します。道宮先輩も、お話し中だったのにすみませんでした』
ペコリと頭を下げて、自分の教室へ戻ろうと踵を返す。
道「ちょ、ちょっと待って!」
澤「···道宮?」