第31章 ステップアップへのチャンス
凄い···
なにも合図を交わさずに、トスを上げた研磨さんも。
それが当たり前のように、スパイクを打ったクロさんも。
···東峰先輩のスパイクをキレイにレシーブした···夜久さんも。
ずっと近くで見て来た及川先輩やハジメ先輩とはまた少し違う、凄さ。
これが···音駒高校バレー部、なんだ。
得点板を見れば、今ので音駒が先に20点台に上がった。
いまの感じで翻弄されていたら、残り5点なんてあっという間だろうと思う。
烏野はさっき、立て続けにタイム使っちゃってるし、繋心はどうするんだろう。
チームとしてまとまりのある音駒に対して、まだ烏野はお世辞にも全員がまとまってるとは言えない。
安定したレシーブ、突出したスパイクやトス···それからブロック。
ひとりずつが個性的で凄いとしても、それはあくまでも個人プレーが凄いってことで。
チーム力としては、音駒とは比べ物にならないかも知れない。
青城だって個人ひとりずつの能力はもちろん凄いけど、でも、それ以上にチームとしても纏まりがあった。
青城の及川先輩、音駒のクロさん。
両方ともタイプが違う主将だけど、それぞれがチームを纏める事に関して中心に軸となっている。
烏野は他の高校と比べたら、そもそもの守備力とか攻撃力のバラつきもある。
だから、澤村先輩に主将としての何かが足りない訳じゃない。
だって、きっと私が男だったら···あんな主将の背中は、ついて行きたいと思うから。
烏野が纏まり切れていないのは、やっぱり···
メンバーが揃ってばかりで、チームとして動き出したばかりだから···だろうなぁ。
これはマネージャーとして、これから先···気合いを入れて働かないと!
少しでも多くの練習メニューがこなせるように。
質の高い練習が出来るように。
桜 ー 紡?焦るのは分かるけど、上達を早めるには練習時間を長くすればいいわけじゃないよ。大事なのは、練習時間の長さじゃなくて···練習内容の、質の高さ、だよ。分かった? ー
新しい事にチャレンジする度に、夢中になって練習してた私に言った桜太にぃの言葉。
質の高い練習。
それをして貰うためには私達マネージャーも頑張らなきゃ!
その為に、繋心に言われる前に動き出さないと。
そう思ってベンチ見ると、繋心は急に椅子から立ち上がった。
