第31章 ステップアップへのチャンス
~ 夜久side ~
澤「ナイスレシーブ!西谷!!」
また、だ。
烏野のリベロがまた、山本が打つスパイクを拾った。
今日この烏野との練習試合までに、他の学校との練習試合をこなして来たけど、あれだけ動くリベロはいなかった。
同じポジションとして、ぶっちゃけスゲーと思う。
番号は···若いな。
確か監督の話だと、烏野の3年は3人だけだと言っていた。
ってことは、あのリベロは2年生か?
体格も小柄だし、元々バレーをやっていたとしたら···恐らくリベロをずっとやってたんだろうか。
オレと、同じように。
烏野は他のメンバーも、数人は安定したレシーブを見せてくるけど、あの4番はズバ抜けて上手い。
オレ達リベロの仕事は、とにかくボールを拾うこと。
それ以上も、それ以外もない。
リベロだけは他のポジションとは違う。
サーブも、スパイクも、攻撃に関するプレーは許されていない。
だからこそ、瞬間的な判断で動き···拾う。
レシーブ以外にただ一つ許される事と言えば、トスを上げること。
しかも、条件付きの。
ウチには研磨がいるから、オレがそれをやる事はまずない。
けど、烏野を見る限り···向こうは向こうなりに凄いセッターがいるかみたいだから、あのリベロもオレと同じような感じだろう。
それにしても、あの本能的な動きはオレだってヤバいと感じるものがある。
でも、オレだって音駒のリベロだ。
負けてらんねぇ!
黒「犬岡ナイス!」
来た!!
烏野の10番に張り付いてる犬岡が、必死にそのスパイクを止めに入る。
犬岡の指先に触れたボールが軌道を変えながら音駒のコートに流れ落ちてくる。
···リベロの仕事は!
オレの仕事は!
ただひたすらにボールを拾うこと!!
軌道は読めてる!
動け!オレの体!!
全身を使って床を蹴り、流れ落ちるボールに向かって体を向ける。
ー ピッ! ー
あと、少し届かなかったじゃないか···
黒「ドンマイ、やっくん」
体を起こすオレにクロが手を伸ばしてくる。
その手を掴みながら立ち上がり、悪ぃ、とひと言だけ零した。
黒「気にすんなって。その代わり、次は···」
あぁ···分かってるよ、クロ。
オレは音駒のリベロだからな。
次は···必ず拾う!!
流れる汗を肩口で拭って、クロに無言で笑って見せた。
