第31章 ステップアップへのチャンス
~ 黒尾side ~
「ドンマイ、やっくん」
立ち上がるやっくんに手を貸して、そう声を掛ける。
夜「クソっ、届かなかった···悪ぃクロ、オレの仕事なのに」
「いいって事よ。その代わり、次は頼むぜ?」
夜「···当然だ」
パンっと手を交わし、オレは回るローテの為に前衛へと出た。
目の前には、ウワサの烏野のチビちゃんが立っている。
なるほど···近くで見れば見るほど、チビちゃんだな。
研磨より···小柄で?
やっくんより···おっと、これはやっくんに聞かれたら機嫌を損ねるな。
こんな小柄な体のどこに、あんだけ飛び出す力があるんだ?
悪ぃと思いながらもマジマジ見ていれば、チビちゃんもオレをマジマジと見返して来る。
「20センチ以上の身長差で犬岡と互角以上に戦うなんて、スゲーなチビちゃん」
別に小柄なのをバカにしてるつもりはない。
小柄なのはウチにもいるからな。
「うっ···チビって言う方がチビなんだぞコラァ!」
···日頃よく聞くセリフが返って来たか。
お前は夜久衛輔か!とか、ツッコミ入れてみようか?
そう思ったら、つい···自分を鼻で笑ってしまう。
ま、このローテ···じっくり見定めさせて貰うとしますかね。
しかし、あの烏野のセッター。
オレと向き合うチビちゃんを引っ張り込んで何やら作戦会議か?
ネット越しとは言え、もの凄い敵対心をビリビリ感じるんだが···
まぁ、いい。
澤「こら、影山も日向もポジション戻れ。あまり長引かせると審判に注意吹かれるぞ?」
「「 ···っス 」」
田「そうだぞ!騒いだりしてもダメだからな!」
澤「···田中もな」
田「 ッス 」
はは~ん?
あの食えない主将、まるで子供を宥めるお父さんみたいじゃないか。
あのボウズくんも、チビちゃんも、セッターくんも、言うこと聞く聞く。
それが主将の器かと言えば、そうかも知れないけどな。
なんつーか、こう···家庭的?
いや、ちと違うか?
一見穏やかそうに見えて、怒らせたら怖いから言うこと聞いとかねぇと?みたいな?
···やっぱ、お父さんか?
どちらにしろ、チーム力ならオレ達だって引けは取らない。
ん?そうなると音駒はオレがお父さんか?
いやいや、海だろ?
どうでもいいわ!
自身にツッコミを入れて、笑った。