第31章 ステップアップへのチャンス
~ 澤村side ~
日向がいま、何かを掴みかけてる。
今までは影山のトスを信じて目を閉じたままスパイク打ってたけど、それを自分の判断でやろうとしてる。
目を閉じてるか開いてるかだなんて、普通に考えたらたいした事じゃないかも知れない。
けど、この瞬間の日向にとっては大きな違いだろう。
コーチの指示で影山もトスを変えた。
それも、日向が打ちやすくなるように。
だったら、いま俺達が出来る事を精一杯やらないと、だな。
ー ピッ! ー
音駒からのサーブ、あのセッターか。
影山とは全く違う観察眼を持ってるヤツだったな。
日「あっ!!」
飛んで来たボールをアンダーかオーバーか迷った日向がレシーブミス?!
マズい!
田「カバー!」
っと、西谷がいてくれてよかった。
西「···龍!」
西谷のレシーブで田中が走り出すのを見て、万が一の為に俺も前に出る。
田「ピンチの時にキメるのは、エースだけじゃねーんだ!!」
ー ピッ! ー
田「っしゃぁぁぁ!」
そうだ田中、俺はちゃんと···お前の事も信じてる!
「「 ソイソイソイソイソイソイ!! 」」
···それさえなければ、もっと高評価なんだけどね。
ほら見なさい···紡だって苦い顔してるじゃないか。
あの顔は後で怒られるぞ、きっと。
まぁ、それより今は考え込んでる日向を何とかしないとだな。
フッ···と息を吐いて、日向に歩み寄る。
「日向」
ひと声かけると、日向が振り返る。
「影山にも力み過ぎるなって言われただろ?視野を広く、な?」
日「あ、はい」
「それに、ほら···」
小さく言って、こっそり紡を指差して見せる。
「うちの怖~い方のマネージャーが見てる」
日「···え」
「練習試合だから、何度だって失敗してもいい。だけど、やろうとしてる事だけに必死になっても、いい結果は生み出せないから肩の力を抜いてみな?」
日「はい!ありがとうございます!」
「よし!」
とりあえずは、これでよし。
次は烏野のサーブからだ。
音駒にレシーブされるのは既に分かりきってる。
だったら、どうすべきか。
俺の仕事はまだまだ···たくさんある。