第31章 ステップアップへのチャンス
いまの日向君の···ライン際ギリギリアウトだったけど、ブロックを交わそうとしたところまではやってた。
たまたま偶然で指先に当たったんじゃなく、ちゃんとコース変更をしようとしてた。
いい方向に進んでるって思える。
レシーブ練習の時はいろいろ大変だったけど、その時に比べたら凄い速さで変わろうとしてる。
それだけ一生懸命で、バレーが好きなんだな···
過去に烏野にいた、小さな巨人。
その人もきっと、いまの日向君みたいに一生懸命だったんだろうと思う。
その努力が実って、全国大会へと道を開いたんだ。
研「紡···生きてる?」
『えっ?あ、研磨さん···生きてます、一応』
不意に顔を覗かれて、1歩下がる。
研「なら、いい···ここ、シワのあと···つくから···」
ツン···と眉間をつつかれて、思わず両手でそこを隠す。
『け、研磨さんっ?!』
研「難しい顔···してたから」
『真剣なって言ってくださいよ···さすがに副審なのにニコニコ出来ないですから』
研「真剣ってより···難しい、だった。なんか、変な物···食べた時みたいな」
変な物って···
黒「こら研磨!お嬢ちゃんが気になるのは分かるけど、今は試合中デス。はい、まわれ右!」
影「お前もだ、城戸!敵チームのヤツとニコニコおしゃべりしてんじゃねーし!」
『ちょ、違うから!』
影「してんだろ、おしゃべり。お前、一応副審だろ」
『れっきとした副審ですけど!』
影「はぁ?!どこら辺がれっきとした副審なのか教えて貰おうか」
『あ、頭掴むのやめて!背が縮む!!』
私が研磨さんとおしゃべり云々ってより、影山の行動の方がダメやヤツじゃん?!
こういう時は···笛で抵抗あるのみ!
ー ピッ、ピッ!! ー
澤「おい影山···お前も試合中って事を忘れなさんなって···」
影「···サーセン」
ふふん···どうだ参ったか。
必殺、審判員からの注意の笛鳴らし!
···後での仕返しが怖いけど。
チッ···と私に向けて舌打ちをした後、影山は自分の立ち位置へと戻った。
気がつけばその場にいた全員がこちらの様子を見ていて、私は慌てて主審役の直井コーチに準備オッケーの合図の代わりに片手を上げた。