第31章 ステップアップへのチャンス
~ 烏養繋心side ~
2回目のタイムアウトが終わり、試合が再開される。
さて、どうしたモンか。
西「旭さん!」
旭「レフトーー!!」
影山と日向の変人速攻が、こうも早い段階で攻略されるとは。
それも猫又先生の指示ではなく、恐らくあのセッターの···だ。
武「あぁ···また返すので精一杯···どうすれば上手く行くんでしょうね···」
日向がまたブロックに捕まり、上手く決められないのを何度も見ては先生がため息を漏らす。
「初めてのプレーをすぐ出来ないのなんて当然だ。でも···どんな事だって、やってみるから始まるんだ」
武「そう···ですよね」
イキナリのプレー変更でまごつくのは仕方ねぇ。
大概のヤツは、それでも練習を重ねて少しずつ合わせて上手くなっていくんだ。
急に違う事をやってみようとして、放っから成功させるなんてのは、桜太や慧太くらいしか知らねぇ。
···アイツら、ホンットにムカつくぐらい何でもこなしやがったからな。
「小さな巨人って、前に烏野にいたろ?」
武「はい、日向君憧れのエースですね?」
「名前のまんまだけど、身長は170そこそこで、最初はブロックに止められてばっかだった。それが2年の後半には、空中戦で右に出るヤツはいなくなったんだ」
武「それだけ努力した、ということでしょうか」
あぁ、そうだろうな。
今の日向に似てる、とか言ったら調子に乗せちまうから言わねぇけど、多分そういう感じだろう。
「ブロックの高さに敵わないなら、その隙間を狙って打つ。わざとブロックの指先に当てて弾き飛ばす。そうやって、小柄な自分の戦える道を作って行ったんだ···全部ウチのジイさんに聞いた話だけどな」
武「烏養前監督ですか?」
「あぁ。ジイさんが言ってた事をスゲーよく覚えてる···翼がないから人は飛び方を探すんだ、ってな」
武「飛び方を探す···なるほど···」
日向、これは練習試合だから、何度でも失敗していいんだ。
失敗して失敗して、もがいて苦しんで···自分の戦い方を···掴め。
お前の憧れの小さな巨人も、そうやってもがき苦しみながら自分の戦い方を掴み取ったんだ。
澤村が言ってたように、コートの中はひとりじゃない。
後ろはアイツらに任せてやれ。
それがチームの信頼関係ってモンだ。
だから何度でも···飛べ!
