第31章 ステップアップへのチャンス
影山のトスを日向君が目を開けて打とうとしたのを見て、繋心が慌てて取ったタイム。
何を話していたのかは、わからなかったけど。
でも、ゲーム再開してからの影山と日向君のコンピプレイの感じが変わった。
今までの、日向君が言う所のいわゆるギュン!ってトスから、影山は普通のトスを上げるようになった。
超速攻から、速攻···くらいの感じで合わせようとしてる。
さっきの日向君は、何度も追いかけられるブロックを避けようとして、影山のスパイクを咄嗟にマネしたような打ち方だった。
普段の練習でそんなの合わせた事なかったから、今も全然スパイクを打つどころか、手にもちゃんと当たってはいないんたけど。
それでも何かを掴みかけてるのか、ブロックされようと、何度もチャレンジしてる。
そして、今も。
西「まかせろっ!」
澤「ナイスレシーブ!···影山!」
音駒からの攻撃に、西谷先輩が飛び込む。
ギリギリではあったけど、そのボールは床に落ちることはなくレシーブされて、上がった!
影山がトスフォームに入るけど、やっぱり日向君には音駒のブロッカーが着いて来てて···
ー ピッ! ー
犬「やった!また捕まえた!」
こんな時、どういう風に声をかけたらいいんだろう。
私がもし、清水先輩みたいだったら。
バレー部のマネージャーとして、澤村先輩達とずっと頑張って来た清水先輩なら。
きっと、私が何か言うよりもずっと簡単な言葉で日向君の背中を押すんだろうな···
清水先輩はバレーの経験はないのに、澤村先輩達が何度も説得しに来てマネージャーに誘われた。
最初はルールさえ知らないから無理だと断ってたけど、あの3人の一生懸命さに自分が折れたんだって、城戸さんと似てるねって笑ってた。
そんな清水先輩だからこそ、きっと日向君の背中を押してあげることが出来るんだろう···とか、何となく想像してみた。
そういうの、ちょっとだけ憧れる。
みんなから信頼されて···まぁ、ごく一部の人には崇拝されてるけど。
でも、そういう関係性って、羨ましかったりもする。
いつか私もそうなれたらいいな。
なんて思ってる間に日向君が音駒のブロックに止められてしまう。
もう少しで上手くボールを捕まえられそうなのに。
繋「もっかいターイム!!」
そう思った矢先、繋心が2回目のタイム要求をした。
