第31章 ステップアップへのチャンス
~ 清水潔子side ~
烏養コーチが取ったタイムが終わり、メンバーがコートに戻るのと同時に私達はベンチに戻る。
武「トスを変えるのはどうして」
腰を降ろして早々に、武田先生が烏養コーチに聞いた。
繋「あぁ、それはだな···」
···そう言われてみれば、私も武田先生と同じ事を考えた事に気付く。
正式なトスの名前とか、今更ながら詳しくはないけど、それでも烏養コーチ影山にトスの変更を伝えた事は気になる。
こんな時、城戸さんだったら···その意図がすぐに分かるんだろうな、とかチラリと彼女の姿を見ながら思う。
思い起こせば1年の時、人懐っこい菅原に声を掛けられて、マネージャーに誘われた。
はっきり言ってバレーボールのルールなんて知らなかったし、それもあって自分には出来ないと一度は断った。
でも菅原は作戦を変えて、今度は澤村や東峰も連れて来て、どうしても···と、説得しに来た。
菅 ー ルールとか、仕事の内容とか、そんなのはオレ達が何度でも教える ー
澤 ー 清水1人に任せっきりにはしない。だから、頼まれてくれないか? ー
旭 ー 手が空いた時はオレも手伝うから、どうかな? ー
最初はとにかく何度来ても断ってたけど、それでもめげることなく説得に通い続けた3人に、とうとう私が折れた。
マネージャーを引き受けた頃は、私もホントに何も出来なくて、ドリンクの作り方から菅原達に1から教わった。
澤村が、いつか絶対みんなでカラーコートに行く!
そう言い続けて、みんなで頑張って来て。
気付いたら私も、あの3人に感化されて同じ物が見たいと思ってて···最終学年になる直前に東峰の離脱。
もうダメかと思ったけど、そんな時に澤村や菅原があの子を連れて来て、東峰も···戻って来た。
不思議な子···というより、あの子の懸命さが周りをどんどん後押ししてくれてるんだと思うけど。
小さな体で、こんな大きな人達の背中を押せる頑張りが、側で見ていて凄く伝わって来る。
だからきっと、日向も同じ。
周りに比べたら日向は小柄だし、いろいろ躓く事も多いけど。
だからと言って日向は決して諦めたりはしない。
城戸さんと一緒に私も出来る限り···背中を叩いてあげるから。
だから日向···頑張れ。
きっと日向はすぐ、その壁は乗り越えられるから。
