第31章 ステップアップへのチャンス
~ 研磨side ~
ブロック詰めて、翔陽を誘導させることは出来た。
それに、翔陽を犬岡に追いかけさせててあの早い速攻を止めることも。
最初はおれだってビックリしたけど、何度も繰り返していれば、少しずつ何とかなるんだ。
それがいま、ちゃんと証明出来てる。
犬岡が少しでも指先でさわれば、その後には···やっくんがいる。
やっくんだから、絶対にボールは落とさない。
と、思う。
もう少し、コッチ側も対策考えた方がいいのかな。
だってさっき、どれだけ犬岡に追いかけさせてても、翔陽は···笑った。
あの笑いは、どんな意味があるんだろう。
とにかく、烏野が急にタイムを取ったってことは、向こうだって何か新しいことを入れてくるはず。
だったら、早いうちに音駒も。
···?
誰かの視線を感じて、さり気なく振り返る。
···紡、か?
振り返った先には紡以外は誰もいない。
じゃあ、いま感じた視線はやっぱり···紡、だよね?
そんな事を考えながらジッと見ていれば、今度は紡がハッと気付いて顔を上げておれを見る。
別に、これといって他意はないんたけど。
おれと目が合って慌ててる紡が、なんだか···かわいい。
キョロキョロして···リス、みたい。
あとで、飴とかお菓子とかあげたら喜ぶかな?
お昼休憩とかになったら、試してみよう。
何度かソワソワした素振りをしてから、おれにペコリと小さく頭を下げる紡に、おれは小さく手を振ってみると、紡は更に慌てるようにペコペコとした。
面白くて、やっぱりかわいい。
黒「研磨、なぁに遊んでんだ?今は試合中だろ」
クロ、見てたのか。
「べつに、遊んでない。視線、感じたから見たら···紡がいただけだから」
黒「ほ~ん?人見知りのお前が、いつの間にあのお嬢ちゃんと仲良しになったんだ?」
「···さぁね。クロには教えない」
夜「プッ···フラれてやんの。ってか、あのチビちゃん結構際どいライン沿いとかまでシッカリ見てるよなぁ。今まで副審やってた誰よりもキッチリ見てるのが近くにいてわかるよ。それにさ、何かちょっとした動きがリスみたいだよな」
黒「リス?」
「うん···かわいい」
黒「へぇ~、研磨がかわいいとかねぇ?」
「···なに、クロ」
ニヤリと笑うクロに冷たく視線を送り、監督の方に顔を向けた。
