第31章 ステップアップへのチャンス
~ 日向side ~
なんだ···これ。
何なんだ、この感じ。
飛んでも飛んでも、どれだけスパイク打っても決まらない···この感じ。
バレーの試合を初めて経験した時も、影山がいた北川第一のブロックに道を塞がれて苦しかった。
烏野に入って、初めての練習試合の時だって。
北川第一にいたらっきょヘッドや、なんかひょろひょろしたヤツにブロックされたり、大王様の凄いサーブでびっくりしたけど。
そんなのとは全然違う。
オレ···音駒のブロッカーに捕まってばっかなのに、悔しいとか、ムカつくとか、そんな気持ちもあるけど。
楽しい···そう、思える。
そう思うと、まだまだやれる!そう感じて思わず笑ってしまう。
影「おい!!」
「なんか、違うんだ···ブロックで向こう側が全然見えなくて、どうすればいいか分かんなかったあの頃の感じと、なんか違う。向こうもギリギリでついてきてるのが分かる」
それはオレだって同じで···ギリギリな感じではあるけど。
ブロックに止められたんだから、ギリギリじゃなくてアウトかもだけど。
「今までブロックは怖くてイヤなだけだったけど、アイツが目の前に来るとワクワクするんだ。お前のトスと、あと何かの工夫で打ち抜けるんじゃないかって思えるんだ···だからもう1回、オレにトスを上げてくれ」
その工夫が何なのかさえ、まだ分かんないけど。
でもきっと、影山のトスがなきゃ···出来ないかもだから。
影「···当たり前だ」
影山の返事を聞いて、オレも頷いて見せる。
キャプテンが、壁にぶち当たったときは乗り越えるチャンスだって言ってた。
だから、これはオレのチャンスなんだ。
でも、どうやって乗り越えればいいんだろう。
さっきから何回も影山のトスでスパイク打っても、やっぱり止められてばっかで。
影山みたいにスパーンって真っ直ぐ打つには、やっぱりちゃんとボールとか見なきゃ出来ない、よな?
床を踏み切った勢いに体をのせながら、ボールを打つ瞬間に目を開けてみる。
そこには初めて見るような景色が広がっていて。
影山のボールだって、ちゃんと見えていて···だけど。
ちゃんと見えているハズのボールは、オレの手に···届く事はなかった。