第29章 ネコと呼ばれる人達
『見なかった?って言われても···どんな人ですか?』
漠然と見なかったかと聞かれても、それこそ皆目見当もつかない。
ー ん~、お嬢ちゃんより高くてオレよりチョイ低くて、背はこんくらい?で、プリン頭のスマホばっか弄って歩いてるか、ボーッと立ち尽くしてるか··· ー
···プリン頭以外、全然わかんない。
『もし、どこかでそんな感じの人を見かけたら声は掛けておきますけど···えっと、名前を伺っても?』
ー あ、オレ?ま、そいつに会ったら、クロが探してたって言ってくれたら分かるから ー
『クロ、さんですか?』
黒「そう言えば分かる。そいつ昔っからオレの事をそう呼んでるからスグ分かるよ」
日向君を探しながら、もし見かけたら···クロさんが探してましたって伝えよう。
黒「あ、そだ。そっちの探し人も見かけたら声、掛けとくけど?」
『じゃあ、お願いします。私の名前は、城···あ、すみませんちょっと電話出ていいですか?』
自分の名前を名乗ろうとした瞬間に、手に持っていたスマホが鳴り出した。
『もしもし···あ!スガさん?!今どこですか?!』
着信相手を確認せずに通話を押したから、相手が菅原先輩だとわかって声を上げてしまう。
黒「ん?探し人からか?連絡取れて良かったな。んじゃ、コッチの見かけたらよろしくな?お嬢ちゃん」
会ったばかりと同じようにニヤッと笑いながら私の頭をひとつ叩いて、クロさんと名乗った人は歩き出した。
『あ、ちょっと!あのっ!』
菅 ー 紡ちゃん?誰かと一緒なの? ー
『まぁ、話せば長くなるんですけど···』
そう告げながら去って行く後ろ姿をもう一度見れば、私に背中を向けたまま片手を上げて行ってしまった。
私、菅原先輩を探してたわけじゃないんだけどな。
そう思いながらも、クロさんの探している人が早く見つかりますようにと、小さく願いながら菅原先輩とのやり取りを続けていた。