第29章 ネコと呼ばれる人達
誰···だろう?
『えっ···と、あの?』
ー あ、オレは怪しいモンじゃないから ー
そう言ってニヤッと笑う顔を見て、思わず眉を寄せた。
酔っ払った慧太にぃが、全然酔ってない~!と言い張ってリビングで寝転げ回る姿が浮かび···怪しい人ほど、怪しくないと言う理論に行き着いてしまう。
だいたい、連休の中日に半袖シャツに長ジャージ姿でウロウロしてるんだから、怪しむなって言われても···ねぇ。
そんな姿で彷徨いてるのなんて、休日の慧太にぃか、最近だったら繋心しか知らないし。
『どこのどなたか存じませんが、お構いなく···』
無視して立ち去るのも心苦しいから、とりあえず軽く言葉を返して背中を向けて歩き出した···つもりだった。
ー またまたァ、迷子のクセに強がっちゃって。ほら、チョイ待ちなって。オレも人探しの途中だけど、お母さん探しなら見つかるまで探してあげるからさ、お嬢ちゃん ー
『お嬢ちゃん?!』
商店街のオジチャン達にしか呼ばれないような呼び方に、意志とは反して足が止まってしまった。
『お嬢ちゃん、って。もしかして私の事ですか?』
ー 他にいないだろ、お嬢ちゃん? オレも土地勘ないけど、お母さん探したり、交番くらいなら連れてってあげられるけど?···迷子なんだろ? ー
交番くらいって、そんなの私ひとりで行けるし!
じゃなかった!
『人を探してはいるけど迷子じゃありません。それに、お嬢ちゃんってのも違うと思いますけど』
ー いや、お嬢ちゃんだろ?だってどう見たって小学生··· ー
『違います!小学生じゃありませんから!』
ー じゃ中学生だったか?そりゃ悪かったな、お嬢ちゃん ー
だ、だからお嬢ちゃんじゃないって!
もはや中学生でもないって事を訂正する事も忘れ、この辺では見たことない相手に盛大にため息を吐く。
ー で?誰を探してんだ?あ、誰とは限らないか、何を探してんだ?かも知れないか ー
『探してるのは、まぁ···人、ですけど』
ー ならやっぱ迷子じゃん? ー
『だから!迷子なのは私じゃなくて友達です!それに、あなたこそ誰かをお探しなんじゃないんですか?!』
何を言っても変わらず私を迷子扱いする人に、つい、強めに言葉を投げてしまう。
ー そうそう、オレも人探してるトコよ。どっかで見なかった? ー
