第29章 ネコと呼ばれる人達
清「え?日向が?···うん···」
菅原先輩から清水先輩にかかって来た電話とのやり取りで日向君の名前が聞こえ、もしかして走り込みの途中でケガでもしたんじゃないかと武田先生と繋心と黙り込む。
清「分かった。こっちからもそうしてみるから、じゃ···」
通話を切った清水先輩が、画面を眺めながら小さく息をつく。
武「あの、清水さん?もしかして日向君ケガでも、」
清「走り込みの途中でいなくなったみたいです」
ふぅ···とため息をつきながら、清水先輩がそう答えた。
繋「いなくなった?って」
清「菅原の話だと、影山と先頭を走っていて競争になって、叫びながら走って行ったあとから姿が見えなくなったとか」
武「迷子?でしょうか」
部活の走り込み中に迷子になるとか、びっくりなんだけど。
清「日向は家から学校までの登下校の道以外は、土地勘ないっぽいから」
繋「迷子も有り得るって事か。しょうがねぇヤツだな、ったく」
普段から自転車でひと山超えての通学が主だから、ちょっといつもと違う道を···となれば、そういう感じになっちゃうのか。
だったら、仕方ないかな?
清「先生。ちょっと私、その辺を見て来ます。菅原もはぐれた場所から探してみるって言う連絡でしたし」
『あ、それなら私が行きます。清水先輩はもしかしたらまたスガさんから連絡来るかもだし、私なら今のところ手を付けてる仕事ないですから』
清「そう?じゃあ、お願いしようかしら」
清水先輩の言葉に、お任せ下さい!とばかりに胸を張りシューズを履き替え外へ出た。
とはいっても。
走り込みの途中でいなくなったって言われても、どの辺ではぐれちゃったのか聞いてないから探す範囲は果てなく広い···ような?
日向君がパニクってアチコチ動き回らなければすぐに見つかるかもだけど、それも···怪しいというか、なんというか。
路地に出る度に、右に左に顔を向けながら歩く姿は、事情を知らない人から見れば私の方が迷子みたいじゃん。
『こっちもいないか···あ~もぅ!日向君ってば、どこ行ったの?!』
誰に向けた訳でもなく小さく叫びながら、電信柱に手を付いてひと休みする。
ー まーったく?何だかさっきから怪しい動きだと思って見てれば、やっぱり迷子ちゃんか? ー
ふいに目の前が陰り顔を上げれば、見知らぬ人が私を見下ろしていた。
