第29章 ネコと呼ばれる人達
そして翌朝からは。
繋「足止まってんぞ!手ぇ振り回してんじゃねぇ!」
日「ッス!!もう1本!」
頑張れ!
武田先生とボール拾いを手伝いながら、右に左に動く日向君にエールを送る。
日「っしゃー!」
清「5本成功です」
繋「よーっし、ひと回りしたな?次、ランニング!」
繋心の言葉に、部員のみんながシューズを履き替えて外へ出て行くのを見送る。
武「城戸さん、これで最後の1個ですね」
同時に手を伸ばしたボールを先生が拾い、カゴへと戻して私達のボール拾いも終わった。
『繋心、タオルとドリンク』
繋「おぅ、サンキュ」
みんなこれからランニングとか、キツいだろうなぁ。
でも先を目指すためには続けて試合をする為の体力も必要不可欠だし。
武「元気ですねぇ、昼休みも削って練習とは」
繋「影山のやつ、早朝も走ってんの見たぞ?」
武「あぁ、それなら日向君もですよ?合宿中は登下校の山越えがないからって」
繋「山越え?それであのスタミナか」
影山は普段から毎朝走ってるのは知ってた。
時々、桜太にぃが早出の時に見かけてたらしいし。
日向君も、毎日学校に来るのに自転車でひと山超えるんだって聞いたことあったから、そういうのを含めて、きっと通常以上に走り込みしてるんだろうなぁ。
私も、それに負けないくらい頑張ってフォローしないと!
部員達がいなくなったコートを、清水先輩と一緒にモップ掛けを始める。
少しでも快適に少しでも安全に···そんな気持ちを込めて。
武「もしかして、試合のメンバーでお悩みですか?」
ちょうど繋心と先生の近くを通過する時、先生の言葉が耳に入った。
繋「セッターに···迷う···」
繋心···?
繋「実力からいけば影山。菅原の強みが、1年の時から築いたエースとの連携だとしても···影山はその時間すらあっという間に飛び越えてしまう才能を持ってる」
確かに、繋心が言ってる事は分かる。
青城との練習試合の時、あれは向こうが出てきた条件だったとは言っても、影山は少しも戸惑うことなくコートに立ってた。
ほんの数日、みんなと練習しただけなのに。
それでも影山は、元からそこにいたかのようにプレーしてた。
私はベンチでそれを見ていて、ちょっと···影山って凄いなって思ったんだから。
···チョットだけど。
いつも意地悪だし。
