第29章 ネコと呼ばれる人達
~澤村side~
『あ!大地さん、ちょっといいですか?』
風呂から出ると、ちょうど良かった!と呼び止められ、足を止める。
『あの、最終日の音駒との練習試合の時なんですけど···向こうは地方遠征になってると思うので、ドリンクはどうしたらいいですか?ジャグが必要なら、家から持って来れますし、個別に作るなら清水先輩と作りますけど』
「そうだなぁ、ジャグに作って渡すにしても個別に作って貰うにしても大変だよな」
どうしたものか、と首を傾げて考えてみる。
音駒にマネージャーがいるかどうかすら、俺達は知らないしなぁ。
『大地さん?とりあえず、お部屋に戻ってもいいですよ?お風呂上がりに足止めしてしまってすみませんでした。後でまた、お伺いしますから』
菅「ねぇ、紡ちゃんもお風呂上りでしょ?どうせなら紡ちゃんも部屋に来たら?それなら座って打ち合わせ出来るし、他のヤツらの意見もそこで聞けるしさ?」
ドライヤーなら貸してあげるから、なんて言いながらスガがキラキラ笑顔を振りまく。
おいスガ!
あんなオオカミだらけの場所に、風呂上り状態の子羊を放り込むワケには行かないだろ!
澤「いや、さすがにそれはダ、」
『いいんですか?じゃあ、お邪魔します』
え、ウソでしょ?
菅「そうと決まれば!ほら大地、紡ちゃんもオレ達も湯冷めする前に移動しよう」
澤「あ、うん、そうだね」
む、無防備過ぎる。
普通、女子ならお風呂上りとか寝起きとか、まぁそれに近い状態の姿で男だらけの部屋に···とか、嫌がるだろ。
桜太さんが帰り際に紡をよろしくね?と言ってたのを思い出し、この合宿で間違いがあったらどう責任を取ればいいんだ···とそこまで考えて。
ふと、気付く。
「だからか!納得···」
『なにがですか?』
「あ、いや。俺の独り言だから」
紡は家族で女性と言えば、お母さんだけ。
しかも今はその二人も海外赴任中で、一緒に生活しているのは桜太さんと慧太さんだ。
桜太さんは女の子らしく!とか思ってても強くは指摘せず、やんわりと促す感じで。
慧太さんは···まぁ、うん。
そんな中での生活なら、男の中にぴょっこり紡1人でいても全然平気なわけか。
そもそも運動部のノリ、というか。
道宮とか見てても、さほど紡と変わんないしな。
運動部女子ってのは、そんな感じなのだろうか。
