第29章 ネコと呼ばれる人達
慧太にぃから逃れる様に体を下げると、にょきっとカレーのお皿を持った腕が目の前に現れた。
影「城戸、おかわり」
『か、影山、もう食べちゃったの?』
影「いいから早く」
グイグイとお皿を押し付ける様に伸ばした手から、清水先輩がスっと受け取った。
清「私が行ってくるから大丈夫」
「あ、すみません。お願いします」
というか、ニンジンから逃げられるチャンスだったんだけど···
半ば、と言うより、ほぼ諦めモードでニンジンをすくい上げながらもため息をつく。
仕方ない···息止めて食べれば何とかなる、とスプーンを口へと運んだ、瞬間。
『あっ?!』
横から伸びて来た影山の手が私の手を掴み、パクリとそれを食べた。
澤「おい影山···好き嫌いはダメだって言ってた所だったのに」
影「ふんまへぇん···おかわり待ちきれませんでした」
菅「だからって何も紡ちゃんのを食べることないだろ···しかもスプーンごと」
···そこは、私は何とも言えない立場ではあるけど。
でも、ちょっと助かった···かな?
清「お待たせ影山」
スルリと会話に加わりながら清水先輩がお皿を渡すと、私にチラッと見てから影山は席に戻って行った。
慧「まったく、影山はいつも紡に甘いんだよなぁ」
桜「紡?今回は影山君に助けられちゃったね。だけど
、」
『わ、分かってる。ちゃんと今度からは頑張ります···』
穏やかに笑顔を向ける桜太にぃの、目があまり笑ってない辺り···次はちゃんと食べないと小さい頃のような、ニンジンだらけのご飯が作られてしまう。
そんな世も末な夕飯は、嫌だ···
桜「それなら今日は見逃してあげる。合宿だし、本来は俺も慧太もここにはいないはずだからね」
まだ、お皿にはいくつかのニンジンがあるのを確認して、私はため息を零した。
清「城戸さん?どうしてもダメだったらムリしなくていいから。無理矢理とか、精神衛生上よろしくないから」
『清水先輩、ありがとうございます!···やっぱり女神説はホンモノだったんですね···』
澤「清水?」
清「決定事項です。何か問題でも?」
澤「···いえ、ありません」
清水先輩···お強い···
かくして私は影山と清水先輩に助けられ、その後は美味しく楽しく夕飯を食べることが出来た。