第29章 ネコと呼ばれる人達
『戻りました~!』
武「お帰りなさい、随分と早かったですね」
合宿所の台所に顔を出すと、笑顔を向けながら武田先生が迎え出てくれた。
『実は、』
嶋「こんちは!はい、これタマゴ5パックです」
武「おや、あなたは確か···」
『その確かです。ここを出てすぐに嶋田さんに会って、お店までの往復を車に乗せて貰ったんです』
武「そうでしたか、それはお世話になりました」
お礼を言いながらタマゴを受け取り、武田先生はそれを清水先輩へと渡す。
武「折角ですから、お茶でもいかがです?···清水さん、ちょっと休憩しましょう」
嶋「え?腹減りモンスターのメシ作りは?」
軽く驚いた嶋田さんが言うも、武田先生は笑顔を崩さずに大丈夫ですと返す。
武「強力な助っ人がいるので、みんなで本気を出せばあっという間に出来ちゃいますから、ね?城戸さん?」
『えっ?、あ、はぁ···』
···私、そんなに助っ人なのかな?
まぁ、3人いれば仕事も捗るし、ってことなんだろう。
去年までは清水先輩が1人で作ったりしてたみたいだし。
嶋「そういう事なら、ちょっとだけお邪魔しちゃおうかな?」
『配達はもういいんですか?』
嶋「配達?それはさっき全部終わってるし、オレは朝からずっと働き詰めだったからヘーキ!」
嶋田さんがエプロンを外しながら、キラリと眼鏡を光らせる。
僕がお茶入れますから、と言われて私達はテーブルへと促された。
時間を開けずに用意されたお茶に口を付け、その味わい深さに思わずホッと息が抜ける。
武「リーズナブルな茶葉でも、入れ方にコツを掴めば美味しく飲めるんですよ」
そんな話をする先生を見て、ホントに女子力高いな···なんて笑いが漏れた。
あ、でも?
その考え方で行くと、桜太にぃも武田先生と同じってことに?
なんだかふたりは話が合いそう···
そう思いかけた時、廊下から足音が聞こえて来て訪れた人物が顔を覗かせた。
それに気付いた武田先生が立ち上がり、さっきと同じように笑顔で迎え入れた。
武「こんにちは、お待ちしてました。さぁ、どうぞこちらへ」
いったい誰だろうと振り返る。
武「今ちょっと休憩してまして。よろしければ、まず、ご一緒にお茶はいかがですか?」
···ウソでしょ?
どうしてここに?
ザワつく胸の音をかき消しながら、私は固まった。
