第29章 ネコと呼ばれる人達
~嶋田side~
いつもの配達の帰り道、つい最近見た姿を見つけた。
多分···間違いはないと思うけど、いや、でもこの時間は部活の時間だろ?
こんなトコ歩いてるわけねぇよな?
なんて思いながらも速度を落とし、ゆっくりと車を近付ければ···やっぱり繋心命名のブラックツインズの妹ちゃんで。
聞けば合宿の足りないものを買いに行くとか。
···で、どうせならウチの店でって誘っちゃったんだけど。
隣に座るのがJKってのは、こんなに空気が済んでしまうモンなんだなぁ、ウンウン。
『あの、何だか楽しそう···ですね』
あ、ヤベ···顔に出てたか?!
「ん~?そりゃそうでしょ、こ~んなカワイイ女子高生とドライブしてんだから」
『ドライブって言われても、お店までですけど?』
「い~のそれでも!ちょっとの時間でもオッサンにはオアシスの様な空間なんだからさ」
『はぁ、オアシス···ですか?』
あれ、やべぇ、引いちゃった?!
ちょい話題変えとくか。
「そ、そうそう!繋心だけどさ、どうよ!コーチっぷりは?!」
我ながら苦しい話題の変え方だな···他に共通の話題がない事が辛すぎるぜ···
『繋心ですか?う~ん···私にはなんか威張りんぼうです。でも、部員のみんなには指導してくれてますよ?みんなも烏養コーチ!って呼んだりして』
「へぇ~、あの繋心がねぇ。ま、やるときゃやる男だからな、繋心は。それもアリだろ」
『繋心って、どんなプレーヤーだったんですか?』
「繋心?そうだなぁ···アイツはさ、高校3年間でまともに大きな大会でコートに立ったのは、一試合だけなんだよ」
えっ?!と驚きの声を上げて、妹ちゃんはオレを覗き見る。
「オレらの時代も、上手いセッターがいてさ。ほら、影山···だっけ?アイツ程じゃないけど、例えばそんな感じね。だから繋心はほぼ控えのセッターでベンチに居たんだよ。オレもだけど」
繋心の過去を勝手に話してる引け目もあって、チョロ出してオレもベンチ組だった事を付け加えた。
「だからこそ、その一試合に全力で勝負する。ま、そんな男だよ、繋心は。っと、お店に到着~!」
タマゴだったよね?とかわざとらしく言いながらドアを開けてやる。
何かを考え、微妙な顔をした妹ちゃんがそっと車から降りた。