第29章 ネコと呼ばれる人達
武田先生のお願いと言うのは、タマゴを買い足しておきたいから留守番をしていて欲しい···って事だったけど。
買い出しくらいなら私でも行けるし、何かあった時に先生がすぐ動ける方が都合がいいからって理由で残って貰った。
問題は···そのタマゴの個数。
タマゴを買い足す量にしては、5パックとか多すぎませんか?!
いったい何に使うんだろ。
1人で持つには多い気がするけど、ま、エコバッグ渡されたし何とかなるでしょ。
一番近いスーパーは···なんて考えながら歩いていると近くでクラクションを鳴らされて振り返る。
「やっぱりそうだった!」
すぐ横に車を止めて、窓を開けた運転手が顔を見せる。
『嶋田さん?!何してるんですか?』
嶋「それはオレのセリフだって。ちなみにオレは配達の帰り。で、紡ちゃんはこんな所で何してんのかな?今は部活の時間だろ?」
ニコニコと営業スマイルを向けながら、嶋田さんは自分の付けているエプロンをトンっと叩いた。
『嶋田マートって、配達もやってたんですね。もっと早く知ってたらなぁ、あ、繋心に聞けばよかったのかも』
そしたら、例えタマゴでもたくさん買ったら届けてくれるんじゃ?なんてこっそり思いながら、自分は買い物を頼まれて向かうところだと説明する。
嶋「タマゴ5パックねぇ。結構重いぞ、多分」
『まぁ、そうかも知れませんけど···武田先生からエコバッグ持たされてるし、近場のスーパーで買えば何とかなるんじゃないかな?って思ってたところです』
スーパーのビニール袋よりエコバッグの方がしっかりしてるし持ちやすいから。
なぜ、武田先生がエコバッグを持ち歩いているのかは聞かないで置こうとは思ったけど。
カワイイ柄だし、手作りっぽいし···
嶋「ね、良かったらその買い物、ウチの店でしない?」
『え?だって嶋田さんのお店って、ここからは距離ありますよ?』
嶋「かわい子ちゃんには、送迎しちゃうから」
···送迎?
何となく怪しげな視線を向ければ、そんなに警戒しなくても···と嶋田さんが笑う。
嶋「ほい、乗った乗った!サッと買い物済ませて、早く夕食作りしたいだろ?腹減りのアイツら待たせると怖いぞ~?」
確かに···迷う余地、なしだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて。お願いします」
ペコリと頭を下げて、開けられたドアから車に乗せて貰った。
