第29章 ネコと呼ばれる人達
山「えっと、そうじゃなくて」
影「お前はイチイチ距離が近いんだよ!」
『わっ!』
グイッと後ろ襟を引っ張られ、その場にペタンと座り込む。
『ちょっと影山!なにすんの!』
影「っせぇ。練習中に話しかけんな」
うわ、何あの態度。
だいたい、影山だって私に話しかけてんじゃん。
まったく···と漏らしながら立ち上がり、影山の背中に向けてベーッと舌を出す。
菅「影山は分かりやすいよなぁ」
澤「ま、スガ程じゃないけどな?」
レシーブの順番が終わった澤村先輩達が、私と影山を交互に見ながら言う。
『分かりやすいって、何がですか?』
私がそう返すと2人は苦笑いを向けながら、分からないならそれでいいんだよ、と目を細めた。
休憩を挟み、清水先輩と通常のマネージャー仕事を終えると、いよいよ夕食作りに取り掛かろうという時間になっていた。
清「澤村、私達そろそろ合宿所に先に行ってるから」
澤「わかった。こっちの事は大丈夫だから、悪いけど···そっちは頼む」
『繋心も、練習終わったらみんなと一緒に来て下さいって先生が伝えて欲しいって』
繋「オレも?」
『うん。合宿最初の食事はとても大切だから、みんなで食べましょうって』
繋「あぁ、わかった」
『繋心、言っとくけどお酒はないからね!』
繋「分かってるっての!アホかお前は!」
『ならよし!何となく繋心、慧太にぃと同じ感じがしたから念の為だよ、ね·ん·の·た·め!』
うっせーな!と反撃する繋心を笑い飛ばしながら、じゃ行ってきます!と元気に告げて清水先輩と体育館を出た。
合宿所に着くと、早くから先に来ていた武田先生が各部屋の掃除を既に終わらせていて、その家事力に清水先輩と小さく笑ってしまった。
『お風呂場も、トイレも。どこもかしこもピカピカ···』
武「なんだかワクワクしてしまって、早々に職員室での用事を済ませて張り切っちゃいました」
どうです!とばかりにジャージ姿にエプロンと三角巾で胸を張る先生の姿が、何とも頼もしく見えて更に笑った。
清「先生、私達の仕事···残ってます?」
ふふっと笑いながら清水先輩が言うと、眼鏡をキラリとさせながら後は食事作りがありますから!とまた胸を張った。
『なら、さっそく始めましょうか?大人数分を作らなきゃだし』
武「あっ、その前にひとつお願いがあります」
