第29章 ネコと呼ばれる人達
違ーーーう!
「ないない!そんな事ないって!逆にひとつ屋根の下オレ的ラッキー!」
『え?ラッキー?』
「あ···」
月「山口···バーカ」
ツッキー、いま小さくだけどバーカって言った?!
月「山口は、ポチの作る食事が楽しみなんだってさ?匂いを想像するくらいにね」
ツッキー、神様みたいな天の声をありがとう!
『私の作る食事?でも、武田先生と清水先輩も一緒に作るんだけど?』
「そ、それでも超楽しみなんだって!だってホラ!厳しい練習ってさ、その後のご飯とか楽しみじゃん?!」
『それは···分かる気がしないでもないけど。でも、そんなにご飯の匂いを想像する位に、私ってご飯っぽい匂いする?』
スンっと鼻で呼吸をして、城戸さんが自分の周りの空気を吸い込む仕草をする。
月「するんじゃない?山口がそう言ってたんだから、おいしそうないい匂いって」
「ツッキー?!」
前言撤回!!
助けてくれたようで、そうでもない?!
オレ今ピンチ!!
『おいしそうな···いい匂い···』
「違うからね!変な意味とかじゃないからね!絶対!!」
慌てるオレの事なんて気にしてない様子で、城戸さんはウーン···と考え込む。
チラリとツッキーを見れば、横を向いてはいるけど···絶対アレ笑いを堪えてるよね?!
『あ!わかった。お弁当の匂い!』
ポンッと手を叩いて、城戸さんびっくり発言をする。
「え、お弁当?」
『おいしそうないい匂いって、多分、お弁当の匂いだよ!ほら見て?さっきフタ開ける時に手に付いちゃって。だから急いで洗いに来たんだよね、私』
···違うと、思うよ。
ホントの事は、言えないけど。
影「いつまでも何してんだ、城戸!遅ぇし!」
『いま戻るから!』
教室のドアから顔を出した影山に呼ばれ、城戸さんがまた放課後にね!って言い残し手洗いをして戻って行く。
そこには、城戸さんからのいい匂いがほのかに残っていて。
バレない様にスウッと鼻で呼吸をしてみる。
月「山口、嗅ぎすぎ」
バレてた!!
明らかにオレを怪しげに見るツッキーに、嗅いでないから!と言って教室までを歩く。
月「そこまでだったとはね···」
小さく呟くツッキーに何度も違うから!と言いながら、オレ達もお弁当を広げだした。