第29章 ネコと呼ばれる人達
あの日から数日、やっとみんなが待ちに待った合宿初日の朝が来た。
桜「紡、ホントにみんなと合宿所に泊まるの?家が近いんだから、通いでもいいんじゃないかな?何だったら俺が烏養に電話して···いや、この場合は顧問の武田先生か···?」
『大丈夫だって、桜太にぃ。武田先生も泊まるんだし、部屋はみんなとは別なんだから。心配し過ぎだよ』
桜「でも、ほら!紡は小さい頃から枕が変わったりとかするとなかなか寝付けない事とかあるし」
···桜太にぃ、そこまで心配かな?
昨夜からずっと、顔を合わせればこんな感じで。
慧「桜太、お前いい加減に落ち着けよ。嫁に出す父親かお前は」
桜「慧太は黙ってて」
案外普通な慧太にぃと、何かと心配ばかりする桜太にぃ。
双子なのに、対照的過ぎるよ。
『とにかく、大丈夫!今までだって小学生バレーの合宿の時も大丈夫だったじゃん!ね?』
その頃はその頃で、今みたいな心配のされ方とかだったけど。
『それに、清水先輩が泊まらずに通いなんだから、夜中に誰かお腹痛いーとか、熱が出たとか、なんかそんな事が起きたらお世話する人も必要でしょ?』
桜「その時は俺に連絡してくれたら駆け付けるから。紡、俺の電話番号ちゃんとわかる?大丈夫?」
···どんだけだし。
慧「桜太も遅れんぞ?今日は外来担当だろうが」
桜「そうだけど···誰かに代わって貰うとか、あ、そうだ!いっそ休みに、」
『だーかーら!大丈夫!何かあったら桜太にぃか慧太にぃに連絡するし!お仕事もちゃんとして下さい!分かった?』
桜「···はい、頑張ります」
まったくもう···学校行く前から疲れちゃうよ。
慧「紡、そろそろ出ないと朝練遅れるぞ。影山も待ってんじゃねぇのか?」
『あっ、そうだ!今日は荷物も多いから、いつもより早く待ち合わせにしたんだった!』
バタつきながら荷物を持ち、玄関へと急ぐ。
桜「紡、忘れ物はない?」
桜太にぃの言葉に、手荷物を確認して、忘れ物はないよと返す。
桜「ほんとに、忘れ物はないかな?」
なんか、桜太にぃにそう言われると···ちょっと不安になって来る。
慧「バカ桜太。はぁ···紡、ほれ、いつものアレだよアレ」
いつもの、アレ?
なんだっけ?という顔だけ慧太にぃに見せると、桜太にぃの後ろで慧太にぃが軽く両手を広げて答えを教えてくれていた。
