第29章 ネコと呼ばれる人達
『そ、そんなに笑わなくても!だってあのビスケット!嶋田マートでも、1箱278円だし!』
そう!値段!
小遣い制の高校生には簡単には手が出ないんだから!
繋「···そんなに熱弁するなら、仕方ねぇ、オレも買ってやるから、な?」
『やった!2個になった!』
無条件で喜び抜いたところで、チクリとする視線に気付く。
月「ポチを誘拐するのは、簡単」
お菓子で釣られて誘拐されるほど、お子様ではありませんからね。
一応、言っとくけど。
慧「とりま、時間もねぇし始めようぜ。繋心、それでいいか?」
繋「あ、あぁ、わかった。レシーブチームはさっきの4人。他のメンバーは交代ずつコートに入れる!菅原と影山は二人とも最初から入っとけ。もちろんお前らも打ち込め!」
繋心の声に、誰が最初にコートに入るかをみんなが話し出した。
菅原先輩と影山がずっと入ってるなら、4人ずつ入れ替わっちゃえばいいのに···
桜「向こうは交代制で、俺達は出っ放しな訳ね」
澤「なんか、すみません···」
桜「責めてる訳じゃないよ。ただ···貸しは大きいぞ、烏養」
繋「紡が言い出しっぺだろうが!」
西「お兄さん方には、疲れさせません!オレが全部拾ってやります!」
慧「おぅおぅ、心強いな」
こっちのチームも、なんか···好き好きに話してるし。
あ~ぁ、私も混ざりたかったなぁ。
···でも。
イチゴクリームのビスケットの為に、ここは記録係に命をかけよう。
2個···貰えるからね。
繋「準備出来たか?!そろそろ始めるぞ!」
「「 ッス 」」
慧「さてと、オレ達も気合い入れてレシーブするぞ!点数なんか楽に取らせねぇ!」
桜「また慧太はすぐ熱くなる···でも、たまには激しく体動かすのも、いいかもね」
桜太にぃがそう言いながら、シューズの紐を結び直す。
『大地さん、西谷先輩。頑張って下さいね!』
慧「紡、オレ達には応援なしかよ」
『だって、慧太にぃはほっといても頑張るんでしょ?』
慧「ビスケット···」
『が、頑張れ慧太にぃ!』
澤「そんなに好きなのか、そのビスケット」
澤村先輩が笑いながら私を見る。
『イチゴ、ですから!』
ドーンと胸を張り答えたところで、繋心のホイッスルが鳴り響いた。