第29章 ネコと呼ばれる人達
ノートに記録を取りながら、こっそりと東峰先輩の顔を見る。
その顔はどことなく不安そうで···もしかしたら、部活に顔を出さなくなる前の出来事を思い出しているんじゃないかと胸が痛くなる。
せっかく復帰したのに、何かいい解決策は···あっ!
今なら出来るかも!
むしろ、今日しか出来ないかも知れないけど!
『繋心!私いいこと思いついたんだけど!』
繋「急になんだ、まぁ、取り敢えず言ってみろ」
『うん!音駒ってレシーブが抜群に上手いんでしょ?で、スパイク打っても打ってもなかなか決まらない。だったらさ、今なら少し練習···っていうか訓練?みたいなの出来るんじゃないかな?』
澤「訓練?」
澤村先輩が私の顔を見て、何をすればいいんだ?と問いかける。
『今みたいなミニゲーム方式で、レシーブ対策出来ると思う。例えそれが付け焼き刃だとしても、試す価値はあるんじゃないかと···』
繋「数日後には練習試合だぞ?それに、今から相手を探すって言ってもなぁ」
『相手なら大丈夫!大地さん、西谷先輩、それから桜太にぃ達も来て?』
何が始まるんだ?と口々に言いながら、名前を上げたメンバーが集まってくる。
『このメンバーに私を入れたら5人!ゲームする訳じゃないから、ひとり足りなくても大丈夫でしょ?』
桜「なるほどね。こっちのメンバーはレシーブ専門に集められた訳か」
繋「レシーブ専門···紡、やってみるか?」
『ホントに?!』
繋「あぁ。但し、お前はコートに入るな。怪我でもしたらオレがヤバイ。明日のお天道様が拝めなくなる···イヤ、マジデ」
せっかくいい提案したのに、コートに入れて貰えないとか···つまらな過ぎる。
慧「まぁ、そうムクれるなっつーの。ほら、帰りにお菓子買ってやるから、な?」
『子供じゃないんだから、お菓子で釣らないでよ!』
慧「あ、そう?いらないの?イチゴクリームのビスケット」
そ、それは!
今だけの、期間限定の···!
グラリ、と心が揺れる音がした。
『···いる。約束だからね、慧太にぃ』
誰にも分からないように小さく返事をしたはずなのに
一斉に吹き出され、ハッと思った時には。
月「お子様にも、程があるデショ···お菓子に釣られるとか···」
そこにいる月島君以外の全員が、肩を揺らしていた···