第29章 ネコと呼ばれる人達
「この練習メニューで、ホントに強くなれる確率を教えてくださぁい!」
なんつー間の抜けた話し方しやがって、ナメてんのか?!
手を上げながら話すヤツを見れば···ん?あんなヤツ、昨日はいなかったぞ?
「あ、じゃあ俺も質問いい?···烏養コーチは、どれだけヤル気満々ですか?」
はぁ?
いや、あんなタッパのヤツも···昨日は···
一日前の記憶を辿り、どう考えてもあのふたりは昨日はいなかったハズだと思い直す。
「おい、お前ら!昨日は部活サボりか?!どうなんだ?!」
連絡なしに部活休むとか、そんな程度のヤル気じゃ指導しがいがねぇだろ!
「あ、オレは昨日はお仕事でーす」
仕事?···って、バイト優先か?!
「まぁ、俺もそうかな?」
···なんちゅう半端なヤツらだ!1度キッチリとシメねぇと!
そう思って1歩前に踏み出して、思考回路が、止まる。
いや···。
待てよ······?
そんな、ウソだろ·········?!
「うわぁっ!!ななななななんでお前らがココにいる?!」
しかも烏野のジャージまで着てカモフラージュしやがって!!
慧「やっと気がついてくれちゃった?け、い、し、ん?」
桜「烏養?ちゃんと部員が揃ったら、まずは人数確認しないと、ね?」
「ううう、うるせぇ!だいたい揃いも揃って何しに来やがった!!」
ズリズリと後ずさりながら言えば、ふたりはその間を詰めるように前に進んで来る。
「ま、待て、来るな!」
慧「何でだよ?まだオレ達なぁんもしてないっつーの」
桜「そうそう、何をそんなに身構えてるのかな?烏養コーチ?」
やめろ、こっち来んな!
「澤村!どうなってんだ、これは!」
澤「えっ?!あ、それは、ですね···」
急にしどろもどろになる澤村の様子から、多分あのふたりに言いくるめられてんだろうと予想する。
「そうだ、紡はどこ行った!アイツもグルかっ?!」
そういやオレが来た時から姿が見えねぇ。
パッと見回しても、見当たらねぇ!
菅「あ、紡ちゃんなら、」
どこにいる?!と振り返ろうとして、背中に壁が当たり背後は塞がれた事に気付き体をズラそうと動く。
桜「おっと?紡が気になる?」
動いた方向に腕が伸び、退路を絶たれる。
頼むから、その黒い微笑みをやめてくれ。
その瞬間···オレの背中に、一筋の汗が流れた。
