第29章 ネコと呼ばれる人達
~繋心side~
「ふぁ~あ···っと」
校門を抜けて、大きなあくびを吐き出しながら体育館へと向かう。
今日から暫くは、この放課後と言われる時間は店番できねぇから早朝の畑仕事の手伝いをやる事になったから···眠い。
昨夜は酒も飲まなかった。
アルコール臭プンプンで、高校生の指導なんか出来ねぇからよ。
お陰で嶋田にはしこたま笑われたけど。
メガネをキラリと光らせながら、な?オレが言った通りだろ?やっぱりコーチやるんじゃん?
なんて言いながら、何度も笑いやがって。
しゃーねーだろ、目の前であんなワクワクするプレー見せられたら。
あんなワクワクは、子供の頃にデカいカブトムシ捕まえた時以来だ。
だけどアイツらは、まだまだ原石の原石だ。
磨き方次第ではいくらでも光りそうだ。
だったらオレが、出来るところまで磨き上げて輝かせてやりてぇ···っとと、危ねぇ。
オレがコーチを引き受けたのは、あくまで音駒との練習試合までだった。
···とか言いながら、これから先の練習メニューとか考えて来ちまった自分が悲しいと思いながら、メモ書きした紙切れをポケットから出して眺める。
やれやれ。
こんなモン考えたなんて嶋田に知られたら、またゲラゲラと笑われちまう。
成果が出てくるまでは、黙ってよ。
体育館の前まで来て、昨日よりボールの音がやたらと聞こえてくると感じる。
やっぱアレか?
昨日の町内会チームとの対戦が効いてんのか?
シューズに履き替え入り口から顔を覗かせると、ちょうどこっちをみた澤村と目が合った。
澤「スパイク練習終わり!全員集合!!」
さすが主将だな。
ひと声で全員が素早く手を止めオレの前に駆け足で集まって来る。
「おぅおぅ、お前ら今日も元気だな?よし、今日から始める練習は普段とは違ってくるだろうが、気ぃ抜いたりすんじゃねぇぞ!」
「「 シャァァッス!! 」」
「いい返事だ!じゃ、軽く説明するからよく聞いとけ!」
ポケットに押し込んだメモ書きを取り出し、チャラっと説明を入れながら読み上げる。
いくつかの練習メニューを提示して···
「ま、こんな感じだ。なんか質問あるか?!」
メモを折り畳みながら言って、質問がないなら練習開始だ!と言おうと顔を上げる。
「はーい、コーチに質問でーす!」
「なんだ、言ってみろ」
