第29章 ネコと呼ばれる人達
慧「ん?オレ達も混ざっちゃっていいのか?」
澤「はい、是非お2人のプレーからも学びたいと思いまして」
桜「熱心だね、澤村君。でも、俺達から学ぶ事なんてないんじゃないかな?もう随分とバレーから離れちゃってるし、君達の方が現役で日々ボールに触ってるし」
謙遜、なのか桜太さんがボールを手の中で転がしながら俺を見る。
澤「ありますよ!···紡や影山、それから日向から聞いてます。お2人が今でも、バレーからは離れていないって事」
どこで、どんな練習をしているのかまでは分からないけど。
でも、日向達との3対3のミニゲームの時を思い出せば、それなりにちゃんと自分も体を動かしていて、そして教えていた···という事は俺にだって分かる。
澤「それでも、です。俺達は行くべきところを目指したいんです。だからその為には、ひとつでも···少しでも何か得られるものがあれば吸収したいと思うので」
昨日の町内会チームとの練習試合でも、それはひしひしと感じた。
今のままじゃ、ダメだ。
影山と日向、旭、それから西谷···
一人一人の能力は高くても、それでもまだチーム能力としてはまたまだ全然だ。
桜「分かった。お手本になんて到底ならないかも知れないけど、それでも良ければ」
慧「おぅ、今は他のヤツらと同じ様にオレ達に指示を出してくれ」
澤「あ、いや···さすがにそれは恐れ多いというか、なんと言うか···」
そう口篭る俺の肩を両方から叩き、2人はコートへと向かって行く。
慧「おーい、菅原!オレ達も仲間に入れてくれ。澤村から許可貰ったからよ」
菅「えっ?!マジですか?!」
桜「うん、そう。今日1日はみんなと同じ様に澤村君から指示が出るから宜しくね?」
「「 ···シャァァッス!!! 」」
あ、だから、指示は···
慧「おいおい澤村!しっかり前向いて指示出せよ~?」
桜「しっかりね、キャプテン?」
キラリと目を光らせながら、俺に声をかけてくる。
澤「え、あ、はい!···ようし、全員スパイク練習!スガと影山はトス頼む!西谷はいつもの感じで全部レシーブ!」
「「 っス!! 」」
ほんの少しだけだけど、ドキッとしたのは···俺の気のせいだろうか。
菅「大地も早く!」
澤「お、おう!」
スガに呼ばれて、軽く息を吐き出して俺もバタバタとコートに入った。
