第29章 ネコと呼ばれる人達
『だ、だからそれは!···何度謝っても、足りないくらいの反省はしてます、ハイ』
旭「そんなに謝らなくてもいいって、ね?確かに驚いたけどさ?だけど、ちょっと得した気もするから」
顎元をポリポリと人差し指で掻きながら、東峰先輩がこの話は終わり!と春先のお日様みたいに笑う。
···次からは気をつけよう。
でも、絶対···慧太にぃだと思ったんだけどなぁ。
気分を切り換えて、さてと着替えに···なんて思ったのは甘い考えで。
慧「さてと、紡?」
あ、やっぱり?
前門の虎、後門の狼とはよく言えてるもので。
『な、なにかな慧太にぃ···』
もうひとつ問題が残ってるのを忘れてた。
慧「お前。とりま面白くて見てたけど、まさかオレと他の誰かを間違えるとは···頂けねぇなぁ?あぁ?」
その絡み方、酔っ払いですか。
『違っ!だ、だって慧太にぃが朝言ってたから!午前中に髪切ったり、髪の色変えようかなぁ、とか!』
慧「ほぅ?それで?」
『放課後来るって言ってたし!東峰先輩も着替えてたし!なにあれヤル気満々じゃん!って』
田「お、お嬢···それくらいにしとかないと、旭さんが···」
え?
西「なに落ち込んでんですか旭さん!着替えててヤル気満々でいいじゃないですか!復活したんだから」
『違いますよ東峰先輩!私は慧太にぃのおバカ加減の事を、』
慧「へぇ~、着替えててヤル気満々でおバカってのはオレの事ね」
しまった···口が滑った···
慧「んじゃまぁ、とりあえず」
『い、痛たたたっ、慧太にぃやめて!梅干しグリグリやめて!頭潰れる!桜太にぃ助けて!!』
桜「慧太、ここは学校なんだから騒がしくするなよ」
クスクス笑いながら桜太にぃが間に入って助けてくれる。
ズキズキとする場所をさすってから、慧太にぃに軽く抱き着き確認する。
『やっぱり東峰先輩とは全然違う』
慧「だろ?やっと分かったか」
『全っ然違う!東峰先輩の方が鍛えられた腹筋してた!』
パッと離れて、べーっと舌を出す。
慧「こンの、懲りてねぇな!待てっ、紡!」
『待てと言われて待つバカはいませ~ん!』
朝と同じくひたすら走り回り、体育館の入口まで来ると清水先輩が入って来た。
神の···いや、女神の助け!!
清「何の騒ぎ?外まで聞こえてるけど」
『清水先輩、助けて!』