第29章 ネコと呼ばれる人達
西谷先輩や田中先輩の騒ぎ声が外まで聞こえていた。
とりあえず着替えに行く前に、遅れた理由を澤村先輩に言っておこうと中を覗くと、見知った様な後ろ姿が目に入り驚く。
あ、あれ?
来るの早くない?!
しかも着替えまで終わってて、何あのヤル気満々な感じ。
よーし、ここはちょっとびっくりさせて日頃の私へのイタズラを後悔してもらおう。
目的の人物が背中を向けている事をいいことに、忍び足でそっと近寄る。
途中、菅原先輩と目が合うも···シィーっと指を立てながら距離を詰めた。
あとちょっと···あと···1歩···
『わっ!!慧太にぃ見ぃつけた!来るの早すぎ!どんだけ楽しみにしてるの?!』
飛び付くようにその背中に抱き着き、慧太にぃが驚く姿を見届けてやろうと···って、あ、あれ?!
びっくりするどころか、固まってる?!
『慧太にぃ···驚き過ぎて声も出ないとか、ウケる!』
菅「つ、紡ちゃん?!」
バシバシと背中を叩きながら、固まったままの体をもう1度ギュッと捕まえてみる。
···なんで、無反応なんだろう。
いつもなら、やりやがったな!笑いながらとか言って···言っ···て···?
もういいや、と振り返れば。
そこに笑いを堪える桜太にぃと慧太にぃの姿が飛び込んで来る。
···待って、じゃあ···この人は?!
澤「つ、紡?···それ、慧太さんじゃなくて···旭···ブハッ···」
ウソでしょ?!
いや、でも嘘じゃない!
だって、慧太にぃは今、体育館の入口にいるんだから!
『わぁっっっ!!』
旭「うわぁっ!!」
一瞬の間を置いて、東峰先輩と同時に叫ぶ。
『ごごご、ごめんなさい!!てっきり私、慧太にぃだとばかり···ホントにごめんなさい!』
笑い転げる澤村先輩と菅原先輩にも、どうして早く教えてくれなかったんですか!と講義しながら、ただひたすらに東峰先輩に頭を下げる。
菅「だ、だって教えようとしたけど紡ちゃんがシィーって!」
澤「そうそう。それに俺達はまさか紡が旭を慧太さんと間違えてるとは思ってないから、旭を驚かせようとしてるんだとばっかり···ププッ」
堪えきれない笑いを漏らしながら、大きく肩を揺らす。
旭「大地もスガも···そこまで笑わなくたって。確かにオレが驚いたのは本当だけど」
菅「あの瞬間の旭の顔···ククッ」
