第29章 ネコと呼ばれる人達
影「俺達も、行くぞ」
先に歩き出した菅原先輩の背中を見ながら、影山が私に声を掛け歩き出す。
『あ、待って影山』
思わず影山の袖を掴んだ。
影「···なに?」
うわ···何か怒ってるっぽい。
多分、昨日勝手に先に帰った事とかだよね?
『えっと、あのね影山。昨日、黙って先に帰って···ゴメン。いつも送ってくれてるのに、ゴメン』
影「別に···怒ってねぇし」
『だって、朝っぱらからこーんな顔してるし』
影「顔は元からだ!···はぁ、何か調子狂う」
『なにが?』
影「お前のせいだ」
···なにそれ。
でも、昨日の事ちゃんと謝れてよかった。
影「あと、昨日は悪かっ、」
菅「お~い、2人とも!遅れるぞ~!」
影山が何かを言いかけた時、先を歩いていた菅原先輩から声がかかる。
影「行くぞ。澤村さんのカミナリは···勘弁だからな」
ぽんッと私の背中をひとつ叩き、影山が早くしろと言いながら歩き出す。
『ね、さっき言いかけたのって?』
影「···あとでいい」
『あと?別に今でもいいじゃん?』
影「うっせ。後で話すからいい」
『えぇ~、気になるから今がいい』
影「しつけーよ」
『王様のケチんぼ···』
イタチごっこの会話に区切りを付けるように言い捨て、命懸けで逃げる。
影「あぁっ?!待てコラァ!逃げ切れっと思ってんのかテメェ!」
菅「おいおい、朝っぱらからやめろって」
私達を振り返って、菅原先輩が苦笑する。
『スガさん早く逃げないと王様がご乱心です!』
菅「なにィ、それは大変だ!姫様、お手をどうぞ?」
菅原先輩に手を取られながら、全力で走る。
影「菅原さんまで?!···クソっ、負けねぇ!」
ただの追いかけっこが、いつの間にか学校までの競走と代わり3人で街中を走り抜ける。
なんかこういうの、楽しい!
『鬼さんコッチコッチ!』
影「誰が鬼だゴラァ!!ぜってぇ逃がさねぇ!」
菅「紡ちゃん···煽るなよ···」
それは体育館に着くまで続き、到着した頃は体が温まる···どころか。
旭「3人でそんなにヘロヘロになってるとか···」
澤「全く···スガまで一緒になって何やってんだか···」
···なんて、少し呆れられながら笑われていた。