第29章 ネコと呼ばれる人達
菅「おはよ!影山」
「はよ···っス」
菅原さんへの挨拶を返しながら、城戸に視線を流す。
『お、はよう、影山···』
「あぁ···」
···気まずい事、この上ない。
いや、それよりも気になるのは。
「菅原さん、こんな朝早くから城戸に急ぎの用事でもあったんスか?」
動揺を隠しながらの、精一杯の聞き方。
『あ、そ、それは、』
菅「泊まったんだよ、紡ちゃんの家に」
あ、あぁそっか、だから一緒に···
「泊まった?!?!」
菅「そ、ちと訳ありで···ね?」
わわわ、ワケありって、なんだ?!
菅「あっ、でも!着替えは慧太さんから貸して貰ったし、その、下着は新しいの貰ったし···シャツは桜太さんが洗濯とかアイロンとかしてくれたから昨日のままじゃないよ?」
とりあえず、その辺は別にイイっす。
『昨日、スガさんに送って貰ったんだけど、その後に家の近くで慧太にぃに遭遇したみたいで、連行されて来たんだよね』
菅「連行されて来たって···オレは宇宙人か?で、そのまま夕飯をご馳走になって、慧太さんとゲームしたり、いろんな事を話してたら遅い時間になっちゃって。慧太さんが、泊まってけ···って」
···なるほど。
確かにその流れで行くと、慧太さんなら強引にでもそうするだろう。
それに桜太さんだって、そういう事になればきちんとした対応してくれる。
菅「だから影山が考えてる様なやましいコトは、なぁ~んにもないよ。朝ご飯のお手伝いを少ししたくらいで」
「え?俺は別に···なんも」
何が言いたいんだ、菅原さんは。
『今朝のスガさんの作ってくれたお味噌汁は、美味しかったですよ?』
菅原さんの味噌汁?!
菅「マジで~?それは嬉しいなぁ。毎日飲みたいレベル?」
『桜太にぃには、まだまだまだまだ及びませんので、修行を積んで下さい。カラーコートの後に』
何か、モヤモヤして。
何か、チリチリする。
菅「さ、立ち話してると朝練に遅れるべ!遅刻すっと大地のカミナリが落ちるから、ふたりとも行こう!」
先に歩き出す菅原さんの背中を見つめながら、城戸を見る。
「俺達も、行くぞ」
それだけ言って、歩き出す。
『あ、待って影山』
袖口がツン···と引っ張られる感覚に振り返ると、城戸が俺を見上げていた。