第29章 ネコと呼ばれる人達
~影山side~
いつもと同じ時間に家を出て、いつもと同じ時間に、いつもと同じ場所で城戸を待つ。
昨日、部室から出た時には既に···アイツ帰ってた。
城戸が帰る時にその場にいた人からの話だと、引き止めてもダメで、それで菅原さんが送って行ったとか言ってた。
なんか急用でも出来たのか?
それなら、ひと言くらい···
そこまで考えて、一瞬、思考が止まる。
俺···何かしたか?
でと昨日は東峰さんの事とか、それに関しての日向の事とかいろいろで。
···日向?
そういやあの時、城戸が日向との間に割って入って来て···そん時に俺は···あ···
何か、何かヤベぇ、思い当たる事を思い出した!
つい、その場の勢いで城戸を押し退けた。
力加減とか、なんかそういうの何も考えずに勢いだけで押し退けた···ような?
その事を城戸が怒ってる、とか?
だから何も言わずに先に帰った、とか?
いや···それしかねぇだろ?!
どースっかなぁと頭をガリガリしながら電信柱に背中を預ける。
どうするも何も、謝るのは前提···だけど。
そもそも今日だって、一緒に朝練行くとも限らねぇ。
城戸は···来るのか?
まだ誰の姿も見えねぇ道の先を横目で見る。
いつもなら、そろそろチビッコイ人影がパタパタと走って来てもいい頃合いなんだけど。
電話、してみっか?
ポケットからスマホを出すのと同時に、視線の先に人影が見える。
城戸、か?
人影は2つ。
チグハグな背の高さで、片方は確実に城戸だ。
じゃ、もうひとつは···?
この時間に城戸と歩いて来るのは、多分···桜太さんか?
前にも何度か桜太さんが歩いて来た事があるし。
普段は車で通勤してるみたいだけど、たまに桜太さんは歩いて勤め先の病院まで行くし。
寄りかかった電信柱から背中を離し、徐々に近くなる人影を見続ける。
···いや、桜太さんじゃねぇ?!
あれは烏野の制服···だよな?
桜太さんはきちんとした質の良さそうなスーツで通勤するから、あの色と形は絶対違う。
詰襟の、黒い学ラン。
完全に城戸の隣を歩く人影が誰か分かるまで時間はかからなかった。
はっ?!···なんで?
そう思いながら自分の意識より、何より先に声が出た。
「菅原さん?!」
その声に反応して、ふたりが同時に…俺の方を見た。