第7章 グレイ scene5
朝食が終わって、にいちゃんが洗っておいてくれた洗濯物を干す。
その間ににいちゃんは台所で晩飯の用意をしてくれる。
「今日も…遅いの?」
「ん?ああ…だから晩飯、先に食ってろよ」
「うん…」
寂しい、なんて言えなかった。
「ごめんね…にいちゃん…」
聞こえないように小さく呟いても、心は軽くならなかった。
学校は、退屈。
教科書に書いてあることは、意味はわかるけど。
僕の今の生活には何一つ役に立たないことばかりだった。
それでも学校が終わると、家に帰って勉強をする。
ちゃんと勉強して、いい大学に行くこと。
にいちゃんの願いはそれだけだった。
そうすれば僕がしあわせになれると信じて疑っていなかった。
「そうじゃ…ないのにな…」
小さい頃に両親を亡くした僕達には、他に身よりも居なくて…
ずっと施設で育った。
にいちゃんが成人して、施設を出てこうやって狭いアパートで暮らしてる。
生活は全部にいちゃんが見てくれた。
そして、僕の大学の学費を稼ぐんだって…
昼も夜も働いてる。
向かいの無人の席に向かって、一人呟く。
「一緒に…居てくれるだけでいいのにな…」
僕たちは…この世でたったふたりの兄弟なのに…
なんで、一緒にいられないんだろう。