第7章 グレイ scene5
和也はスタジオのセットの中に立つと、笑って声を張り上げた。
「じゃあ、よろしくお願いします!」
よく通る声だ。
それをきっかけに、現場は動き出す。
予め打ち合わせしてあったのか、すぐに撮影に入った。
立ち位置を確認して、和也がそこに立った。
瞬間、空気が変わった―――
女性みたいだと思ったのは、ほぼ正解で…
和也は中性的な浪人さんの役だったのだ。
おどけた表情を作ったかと思うと、妖艶にカメラを見つめる。
俺は釘付けになった。
そのまま撮影が終わるまで、そこを動けなかった。
「ふう…」
ホテルの部屋に戻ると、冷え切ってしまった身体を温めるのにすぐにシャワーに入った。
ほんとに和也は凄かった。
あんな短い時間なのに、スタジオに居る人全員釘付けだったもんなあ…
足元を流れるお湯を見ているうちに、どうしても和也に会いたくなった。
でも、仕事だもん。
我慢しなきゃ…
シャワーから出ると、電話が鳴っていた。
慌てて出ると、和也だった。
『翔ちゃん?今何してた?』
いつもと変わらない、温かい声…
「シャワーしてたよ」
『あら、偶然。俺も今風呂から上がったとこ』
「ふふ…お疲れ様」
今日はどんな撮影してたか話してたのに、急に和也は黙り込んだ。
「どうした?」
『翔ちゃん…逢いたい』
「え…?」
『ふふ…なんか今、熱あるっぽいんだよね…』
「嘘…」
『こういうときって、無性に会いたくなる…翔…』
声が少し、掠れていた。