第6章 ショコラ scene4
「…純一郎さんのことが、好きだったんだね…」
「ああ…でも、純一郎さんは気づいてもなかったろうなぁ…」
「なんで?離れに居た、唯一の話し相手だったんでしょう?」
「うん…」
奥様が急須からお茶を淹れて、皆の前に置いてくれた。
「あの時代は…使用人になんて、石ころと同じようにしかみてなかったでしょうね…」
ぽつりと奥様は言った。
「ましてや、純一郎さんのお母様は華族の出だったというから、上流の方の意識をお持ちでしたでしょうしね…」
「でもよくお話で、お金持ちの坊っちゃんと使用人とかの恋の話とかあるじゃん」
「…ああいうのはあくまでも作り話で…現実には身分の違いというのは、人間の意識を変えるものですからね…」
「んん??」
智くんと雅紀はわからないって顔してるけど…
この人達には理解できないだろうなと思った。
人間にはどうやっても乗り越えられない壁は、あると思ってる。
それは育った環境なんかによって違うものだろうけど…
純一郎さんには、おみちさんはそういう対象には一切映ってなかったんだろうな…
あくまでも使用人としてしか見えなかった筈だ。
猫の白を家族だと思っていたんだから…
おみちさんのことは、ノーカウントになってたんだ。