第6章 ショコラ scene4
「黒は、二宮さんと大野さんのところが気に入ってしまったのでしょう…」
昏昏と眠るニノの顔を眺めながら、くすくすと行長先生は笑いだした。
「でも助かりました…黒が来てくれたから、あの御霊がちょっとだけ力を貸してくださる気になったんでしょうから…」
高尾の御陵で見た光よりも、随分小さかった気がする。
だけど、その威力はかなりのものだったと先生が言う。
「ほんのちょっと触れただけでしたが、魔が吹き飛んでいったんですよ…」
「ああ…そういうことだったんですね…」
だから、おみちさんはあんなに素直に謝って居たんだろう。
最後の最後で…人間の魂に戻れたんだ…
思い出したら、ずきんとまた頭が痛んだ。
「櫻井さん?どうしました?」
「いえ…」
「顔色が悪い。横になってください」
先生が寝ていた布団に寝かされてしまった。
俺の額に手を当てると、暫く黙っている。
「ああ…櫻井さんも記憶を見てしまったんですね…」
「え…?わかりますか?」
「おみちさんの記憶に触れたとき、蓋が開いてしまったのでしょう…今、閉じますから、リラックスしてください…」
額に置かれた手が、心地いい。
「…人間には皆、本来はこのような力がありますが、そうすると生活がしにくくなる…だから、普段は閉じているんですよ…」
先生の説明する声が、段々遠くなっていった。