第6章 ショコラ scene4
「でも…でも…純一郎さまは奥様のお腹を痛めて産んだお子じゃないんですか…?」
ぎゅうっと骨箱を抱きしめると、カタリと中の壺が音を立てた。
「自分のお子なのに…なんで…!?」
老医師はため息をつくと、わたしの肩に手を載せた。
「すべての女性が、子供を産んだら母親になるわけじゃあないんだ…」
「でもっ…でも、柊一朗さまはあんなに愛しておられるのに…」
「人間には…そういう種類の人もいるということだよ…」
ぽたり、涙が溢れてきた。
「…おまえは、純一郎様が好きだったんだね…」
老医師の手が私の頭を撫でた。
「白ちゃん…?白…?」
夜更けにどうしても気になって神社を訪れた。
そういえばなぜ白ちゃんはあそこにいたんだろう。
京都には連れて行って貰えなかったんだろう…
純一郎さまの飼っていた猫なのだから。
お百度石を過ぎて本堂の前に出る。
「白ちゃん…白ちゃん…」
純一郎さまの忘れ形見…
だから、お骨は引き取ることができなかったけど、せめて白ちゃんだけでもと、探し回った。
本堂の隅に、白い影が横切った。
「白ちゃん!」
なーぉ…
白ちゃんの周りに、ぼんやりと影が見えた。