第6章 ショコラ scene4
「おまえも暫くは母屋にはこんでええから」
「え…?」
「純一郎の病気がおまえに伝染っていたらかなわんわ…」
そういい捨てて、奥様は庭を戻っていった。
「はあ…息子の死に顔さえも見ないというのか…」
年老いた医師の膝に置かれた握りこぶしに力が入った。
「…この分だと、葬式もあげるのかどうか…」
そう呟いた医師の目には涙が浮かんでいた。
「…純一郎様…」
血で汚れた身体を私が拭き清めた。
医師が寝間着を変えるのも手伝ってくれた。
だからお顔は綺麗なのに…
なんで…?奥様…
暫くただ呆然と、医師と二人で純一郎さまの寝間に座っていた。
「おまえ、ここで線香の番をしていなさい…私が葬儀屋に連絡してこよう…」
そう言って、医師は寝間を出ていった。
太陽が、眩しい
こんなにいいお天気なのに…
なんでこんなにこの離れは暗いの?
なんで、純一郎さまの周りは…こんなに寒いの?
お顔の上に掛かる白い布は、微動だにもしない
本当に…本当に純一郎さまの命は終わってしまったの?
震える手でその布に手を掛けるけど、外す勇気が持てなかった。
ただの使用人の私が…こんなことをしてはいけない…