第6章 ショコラ scene4
「おいで…おかあさんのところにおいで?」
そう呼ぶと、白ちゃんは駆けてきてわたしの足に絡みついた。
「ふふ…くすぐったいなぁ…」
神域に四足の獣は入れてはいけないというけど…
猫は、神様のお使いだから自由にしててもいいんだって。
だから、白ちゃんも自由に境内を歩いてるんだ。
純一郎さまがそう言い聞かせていたんだもの。
「白ちゃんは頭がいいんだねえ…」
ひょいと持ち上げて胸に抱くと、毛皮がひんやりとしていた。
「いけない…白ちゃんまで病気になっちゃう…」
懐を寛げて白ちゃんを入れてしまうと、窮屈そうな声を上げて文句を言われた。
「でもあったかいでしょう?白ちゃん…」
くなん…と返事をすると白ちゃんは大人しくなった。
「暫くそこで我慢しててね…」
このお百度が完成したら…
きっと純一郎さまは良くなるから
それまでの我慢ですよ…
きっと母屋に戻れますからね
「はよ、燃してください」
「奥様…」
「柊一朗に伝染ったらどうしますの…はよ、先生…」
純一郎さまは、布団の上に真っ赤な血を吐いて亡くなっていた。
お百度が完成して離れにそっと戻った朝…
いつも通り雨戸を開けてお部屋を覗いたら、既に事切れていた。
私のせいだ…
私がお百度なんか行かなければ…
純一郎さまが苦しんでいることに気づけたかもしれないのに