第6章 ショコラ scene4
足先が冷たい…もう、感覚がない
でも、まだ後二七回…残ってる。
「はぁー…」
手先を息で温めると、懐からこよりを出した。
昨日の晩、縫い物の合間に夜なべしてこさえた百本のこより。
本堂の前の石畳の上に置くと、参道を引き返した。
お百度石まで戻ると、また本堂の方へ走っていく。
「お願いします…お願いします…」
神様…お願いします
どうか、純一郎さまの肺病を治してください
本堂の鈴を静かに鳴らすと、手を合わせて一生懸命祈る。
また懐からこよりを出して石畳に置くと、引き返してく。
後、二六回…?
ああ…もう何度目だったかわからなくなった…
でも、このこよりが無くなるまで続ければいい。
亡くなったばあちゃんはそう言ってた。
冷たい空気が喉の奥まで入ってきて、咽そうになる。
でも咳をしたら、誰かに見つかるかもしれない。
だから必死で我慢して口に手を当てる。
治るわけがない―――
奥様は、そう言った。
でもわたしはそうは思わない。
きっと養生すれば、純一郎さまはよくなる…
栄養のある食べ物をたくさんたべて…
そして…笑って…?
純一郎さまは、笑顔がいちばん…
「あ…」
本堂の隅に白いものが横切った。
「白ちゃん…?」
なあん…と鳴いて出てきたのは、純一郎さまの可愛がっている猫だった。