第1章 ラピスラズリ
控室には…誰もいなくて…
しんとしていて…
俺とニノの二人きり
心臓が、なんだかうるさい。
どきどきしてる。
ぎゅっとニノの腕に力が入った。
コーヒーを飲み終えてしまって、空になった紙コップを前のテーブルに置くと、どうしていいのかわからなくなった。
ニノは香水なんかつけなくって。
いつもシャンプーのにおいをさせてた。
今使ってるシャンプーは、猫っ毛にいいよなんてこの前言ってたやつかな…
そっとニノの頭に手を乗せる。
ぴくりとニノが動くけど、何を言ってくるわけでもなかったから、なんとなくそのまま頭を撫でていた。
ニノがもそもそと動いた。
「う…」
肘が、当たってるって…
わざとじゃないんだろうけど…
そこはダメだってば…
っていえばいいし、ちょっと体を引けば当たらなくなるのに。
なんだか俺はそのままにしてしまった。
「…どうしたの…?」
すごく至近距離で、ニノが顔を上げた。
「…なんでもない…」
「大野さん…」
少し、甘えた声。
思わずニノの唇を見つめてしまう。
とろんとした目で俺を見てるニノの顔が、どんどん近づいてくる。
「…あ…」
薄い唇が俺の唇に重なった。