【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
「……ん。まさかこれ、か?」
鞘の鯉口辺りに文字……――の“様なもの”が見えた。
しかし
「おい、これ……、本当に『麻言』って読むのか?」
疾風の周囲に集まっていた水夫達も一様に眉を顰めていた。
それはどう見ても、彼らには記号のような物にしか見えていなかったのだ。
「おい、貸せっ」
と言って、疾風から刀を受け取った兵庫第三協栄丸が
麻言の面前に持ってくると
「――おい、これの事だな? 『麻言』と書いてあるのは」
「あ、はいそれですね。少し前にお世話になってた御夫婦にも実は『読めない』って言われたんですけど……」
途端。
兵庫水軍の中でピリリッと張り詰める様な緊張感が走る。
どう考えてもおかしい。
「……お前まさか、謀ってるんじゃあ、あるめぇな?」
眼光鋭く、疾風が凄む様に言った。
各々が疑念を浮かべ始めている。
あどけない少年の見た目に気が緩んでいたが、
こうも話す事柄がおかしいばかりだと……。
「――まっ、待って下さいっ!」
緊張の糸を解く様に、慌てて皆の前に飛び込んできたのは重だった。
「重っ! 何をしてるんだっ」
「すいません……っ! でもっ、俺にはこいつが悪い奴には思えないんですっ!!」
「おいっ、重お前……っ!」
驚き、声を荒げる舳丸に弁解する様にそう言った重へ疾風の怒声が飛ぶ。