【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
「お前さん……、名は?」
目の前で正座している漂流者の少年に対して、
胡座をかいて座っていた兵庫第三協栄丸が
強い眼差しを向けながら切り出した。
「あ、麻言と言います。えっと、一応なんですが……」
「ほう……麻言。……へ?何だ、その『一応』って」
問い掛けに対して、のんびり柔和な口調と曖昧なその答えに当惑する。
すると、麻言と名乗った人物は疾風が片手に持っていた刀を指差した。
「あ?これが何だ」
「その刀の鞘の端に、そう名前らしきものが彫ってあったんで……」
そう言われると、疾風はその刀の――
黒と赤の濃淡がかかった鞘を眺め回す。
この刀は当の麻言本人がずっとその背に背負っていたものだった。
尋問するにあたって何か間違いを起こさぬとも限らないので、
現在疾風が預かっている。
――しっかし、見りゃあ見るほど変わった鞘の刀だよな。
黒と赤の濃淡。
こんな色の鞘だけでも珍しいというのに、白く幾重にも細く湾曲した彫り込みが入っており
さらに細く内部には刻目が見られる。
全体を見ると何かの模様のようだった。
――……にしても、この模様。何処かで見たことがあるような……?
「――おいっ疾風。何やってんだ?まだ見つからねぇのか」
「はっ!す、すいやせんっ」
うっかり見入っていた疾風は兵庫第三協栄丸の呼びかけに我に返ると
再び彫り込みの文字を探し出す。