【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
第一章最終話―
第六話「彼女の事情」
―同時刻、水軍館にて。
夜も深まり、それと相まって辺りは静けさに包まれる中―
それに対するように、活気のある笑い声が響いていた。
第三協栄丸を始め、疾風、蜉蝣、由良四郎の四人が残って
晩酌しながら談笑していたのだ。
そして、その話題の中心となっているのが
「―いやあっ、しっかし本当に凄かったっすね!
俺ぁ、久々に度肝抜かれちまいましたよぉっ」
「ああっ!あんな細腕であの鮫を一刀両断しちまうとはなぁ…っ!」
「斬りかかった時の上段は本当に見事でしたね…っ!」
「きっと元は何処か、名のある剣術使いに違いあるまいっ」
疾風、第三協栄丸、由良四郎、蜉蝣が口を揃えて
賞賛し合うのは麻言の事だった。
酔いですっかり真っ赤に染まった顔は皆笑顔でとても上機嫌だ。
それもそのはず。
近日兵庫水軍を悩ませていた鮫は退治され、その上仲間まで救われたのだ。
これが笑わずには、いられない。
「―あっ、そうだお頭ぁっ!
もし何なら、このまま麻言の奴を兵庫水軍に引き入れる…
っつぅのはどうですかい?」
ひらめいたっ、とでも言うように掌を拳で打ち鳴らし疾風がそう言い出したのだ。
余程麻言が気に入ったのか、彼には珍しい提案だ。
それに「おい、おい…」と兵庫第三協栄丸は呆れるように笑って
「こら、疾風。あいつにも色々事情があるだろうに俺達が
勝手に決めちゃあ駄目だろう」
と続けて諭すようにそう言うが、
本人も満更でもない様子でどこか口調が柔らかい。
「そうですね。
…それに、老夫婦の家を急に出てきた理由もまだ聞いてねえですし」
想起するように蜉蝣の目が斜め上に動く。
船上で大体の事情を聴いた後、
その質問を疾風が投げかけると麻言は何やら言い淀んでいた。
今更間者や、忍者等と疑っているわけではない。
ただ、その表情が心底困っていた様に蜉蝣にはとらえられたのだ。
「まあ、何にせよ…本人がいないんじゃあ、話も進まないですし今日のところはこれで、お開きにしませんかい?」
明日も朝は早い。
話のきりも良さそうな所で由良四郎がそう申し出ると、そうだなと第三協栄丸と蜉蝣が口を揃えた。
まだ飲み足りないのか、疾風は少し渋る様な顔をしていたが
第三協栄丸の手前、不承不承と頷くしかなった。
―と。