【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
北西の方向。
恐らく由良四郎と同様のものを見た疾風は血相を変えた。
遠目に彼が見たものは、着物の袖を岩礁に引っ掛けた人間の後ろ姿。
水面に上半身をちゃぷちゃぷと浮かせているのは見えるが……、
「――っ北西の岩礁に人の姿っ! 生死は分からんっ!」
疾風が叫ぶと一気に船の上がざわつく。
すると。
「風太夫っ、見せて頂いても?」
いつの間にか傍まで来ていた舳丸が疾風へそう訊ねると、疾風は無言で遠眼鏡を渡した。
受け取った舳丸は遠眼鏡ごしにすぐに姿を確認した様子で「あれですね……」と呟く。
「――どう思う?」
「……私にも判別は難しいですね」
舳丸を横目に疾風は確認するも、答えは冴えない。
水練である舳丸は、海で溺れている者の救助
……または、亡くなった者の回収に手馴れている。
しかし、そんな彼にも岩礁まではかなりの距離があるのか遠目からは判断できないようだった。